後遺障害慰謝料の計算基準は3種類!「弁護士基準」で高額な支払を受けよう
交通事故に遭って辛い後遺障害が残ったら、相手にはきちんと慰謝料を支払ってもらうべきといえるでしょう。ただその際の「慰謝料計算基準」には複数あり、どれを適用するかで慰謝料の金額に大きな違いが発生してしまいます。
自分で保険会社と交渉すると低額な「任意保険基準」で計算されてしまうため、本来受け取れるはずの金額よりも慰謝料が減額されてしまうケースも少なくありません。
正当な慰謝料を受けとるためには法的な基準である「弁護士基準」を適用する必要があります。
以下では後遺障害慰謝料の金額が計算基準によってどのくらい変わってくるのか、比較してご紹介します。これから交通事故の示談交渉を行う方、事故で後遺障害が残ってお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
1. 交通事故の後遺症、後遺障害とは
交通事故に遭うと、さまざまな後遺症が残る可能性があります。
たとえば目が見えなくなった、脚を失って歩けなくなってしまった、高次脳機能障害となって日常生活で介護が必要になったり仕事を続けられなくなったりする方など。
後遺症が残ったら被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、その精神的苦痛を和らげるために加害者へと慰謝料を請求できます。それが「後遺障害慰謝料」です。(なお後遺障害慰謝料を請求するには、「後遺障害等級認定」という手続きを受けなければなりません)
交通事故後のケガとして特に有名なのは「むちうち(神経障害)」ですが、それ以外にもたくさんの後遺障害があります。
実は交通事故による後遺障害は35もの「系列」に分類されており、その程度によっても支払われる慰謝料額が異なります。
【よくある後遺障害の例】
- 眼の後遺障害
視力障害や調節機能障害、運動障害や視野障害。
まぶたの欠損障害や運動障害もあります。
- 耳の後遺障害
聴力障害や耳殻の欠損障害、耳漏や耳鳴りの後遺障害もあります。
- 鼻の後遺障害
欠損障害や嗅覚障害があります。
口の後遺障害
咀嚼や言語の後遺障害、味覚障害があります。
- 歯牙障害
歯が欠けたり失われたりする後遺障害です。
- 神経系統の機能障害または精神障害
神経系統に損傷が発生し、四肢麻痺や感覚障害、運動障害、排尿排便障害などのさまざまな症状が発生します。
- 醜状障害
顔面や首、頭に大きな傷跡が残ったり、腕や脚、腹部などにあざが残ったりする障害です。
- 胸腹部臓器の障害
心臓や肺、腎臓や胃腸、生殖器などの内臓機能に生じる後遺障害です。
- 体幹部の後遺障害
脊柱(背骨)の変形や運動障害、その他体幹骨の変形障害などです。
- 上肢の後遺障害
腕が欠損したり機能障害が発生したり変形したりする後遺障害です。
手指に欠損や機能障害が生じるケースもあります。
- 下肢の後遺障害
脚が欠損したり機能障害が発生したり変形したり、一本の足が短縮して他方の脚と不均衡が生じたりする後遺障害です。
足指が欠損したり機能障害を起こしたりするケースもあります。
交通事故後、治療を続けても回復せず上記のような後遺症が残ってしまったら、後遺障害慰謝料を請求できる可能性があると考えましょう。
2. 後遺障害慰謝料を受け取るには「後遺障害等級認定」されなければならない
交通事故に遭って後遺症が残ったら、自賠責で「後遺障害認定」を受ける必要があります。後遺症が残っても正式に「後遺障害」として認定されないと、後遺障害慰謝料は支払われません。
後遺障害には14段階があり、認定されるといずれかの等級が決まります。認定された等級により、後遺障害慰謝料の金額が大きく変わってきます。
1級がもっとも重く14級がもっとも軽い等級ですので、金額的には1級がもっとも高くなります。たとえば事故で両眼を失明したり植物状態(遷延性意識障害)となったり両腕を根元から失ったりすると、1級が認定されます。
むちうちの場合には、12級または14級になる可能性が高いと考えましょう。
3.後遺障害慰謝料の3つの計算基準とは
後遺障害が残った被害者は強い精神的苦痛を受けるため、保険会社から「後遺障害慰謝料」が支払われます。ただし後遺障害慰謝料の計算方法は一律ではありません。
以下の3種類があります。
3-1.自賠責基準
自賠責保険が被害者に保険金を支払う際に適用する計算基準です。国土交通省によって一律に定められているので、どこの保険会社から支払を受けても同じ金額になります。
ただし自賠責保険は被害者への最低限の救済を目的とする保険。金額的には3つの基準の中でもっとも低額になると考えましょう。
3-2.任意保険基準
任意保険会社が定めている賠償金計算基準です。それぞれの任意保険会社が独自に設定しているので、一律ではありません。全体の相場として、自賠責基準よりは多少高い金額となるケースが多数です。
3-3.弁護士基準(裁判基準)
法的に適切とされる賠償金計算基準です。弁護士が示談交渉する場合や裁判所が賠償金を計算するときに使われるので、「弁護士基準」や「裁判基準」と呼ばれます。
交通事故の被害者は、本来的に弁護士基準で慰謝料を請求できる権利をもっているといえるでしょう。金額的には3種類の賠償金計算基準の中でもっとも高額となります。
4.3つの計算基準の比較
同じ損害が発生した場合でも、適用する賠償金(保険金)の計算基準によって実際に支払われる金額が大きく変わってきます。
3つの計算基準で後遺障害慰謝料を計算するとどのくらいの差額が発生するのかみてみましょう。
4-1.後遺障害慰謝料の場合
等級ごとの後遺障害慰謝料の金額を比較すると、以下のとおりです。
なお任意保険規準は保険会社によって異なるので、推定値(相場)の金額となります。必ずしも以下の金額になるとは限りません。
また弁護士基準の場合にも、実際には個別のケースに応じて算定されます。以下に記載する金額に対して多少の増減額があると考えてください。
認定等級 |
弁護士基準、裁判基準 |
任意保険基準 |
自賠責基準 |
1級 |
2800万円 |
1300万円 |
1100万円(要介護1600万円) |
2級 |
2370万円 |
1120万円 |
958万円(要介護1163万円) |
3級 |
1990万円 |
950万円 |
829万円 |
4級 |
1670万円 |
800万円 |
712万円 |
5級 |
1400万円 |
700万円 |
599万円 |
6級 |
1180万円 |
600万円 |
498万円 |
7級 |
1000万円 |
500万円 |
409万円 |
8級 |
830万円 |
400万円 |
324万円 |
9級 |
690万円 |
300万円 |
245万円 |
10級 |
550万円 |
200万円 |
187万円 |
11級 |
420万円 |
150万円 |
135万円 |
12級 |
290万円 |
100万円 |
93万円 |
13級 |
180万円 |
60万円 |
57万円 |
14級 |
110万円 |
40万円 |
32万円 |
要介護の後遺障害とは
要介護の後遺障害とは、「介護を必要とする1級または2級の後遺障害」で、以下の2種があります。
第1級 一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級 一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
任意保険基準でも、要介護の後遺障害になると一般的な1級2級のケースより増額されるケースがあります。
4-2.弁護士基準で計算すると慰謝料が増額される
上記の通り、弁護士基準で計算すると、他の基準と比べて大幅に後遺障害慰謝料が増額され2倍や3倍程度となるケースも少なくありません。
たとえば重症の高次脳機能障害となって後遺障害3級が認定されたとしましょう。自賠責基準なら829万円、任意保険基準なら950万円程度にしかなりません。一方で弁護士基準をあてはめると1,990万円にもなります。
むちうちの場合には12級または14級に認定されるケースがおおいのですが、12級が認定されたとき、任意保険会社からは100万円程度の慰謝料しか支払われません。弁護士基準なら290万円もの慰謝料を請求できます。
14級であっても、任意保険基準では40万円であるところ、弁護士基準なら110万円程度にまで増額されます。
このように、弁護士基準で計算すると後遺障害慰謝料が大きく増額されるので、被害者の立場としては必ず弁護士基準で計算すべきといえるでしょう。
4-3.入通院慰謝料の場合
交通事故で後遺障害が残ると、後遺障害慰謝料とは別に「入通院慰謝料」も請求できます。
入通院慰謝料とは、「交通事故でけがをしたことに対する慰謝料」です。
事故によってケガをすると、被害者は大きな恐怖や痛みを感じるので精神的苦痛を受けるもの。その苦痛を和らげるため「入通院慰謝料」として慰謝料を払ってもらえます。
入通院慰謝料の金額は、入通院治療を受けた「期間」に応じて計算されます。また後遺障害が残らなかったケースでも支払われるので、万一後遺障害非該当となっても受け取れると考えましょう。
参考までに入通院期間ごとの慰謝料額を掲載します(弁護士基準の場合)。
【むちうち(頸椎捻挫)や打撲、捻挫などの軽傷の場合】
入院 |
|
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
7ヶ月 |
8ヶ月 |
9ヶ月 |
10ヶ月 |
通院 |
35 |
66 |
92 |
116 |
135 |
152 |
165 |
176 |
186 |
195 |
|
1ヶ月 |
19 |
52 |
83 |
106 |
128 |
145 |
160 |
171 |
182 |
190 |
199 |
2ヶ月 |
36 |
69 |
97 |
118 |
138 |
153 |
166 |
177 |
186 |
194 |
201 |
3ヶ月 |
53 |
83 |
109 |
128 |
146 |
159 |
172 |
181 |
190 |
196 |
202 |
4ヶ月 |
67 |
955 |
119 |
136 |
152 |
165 |
176 |
185 |
192 |
197 |
203 |
5ヶ月 |
79 |
105 |
127 |
142 |
158 |
169 |
180 |
187 |
193 |
198 |
204 |
6ヶ月 |
89 |
113 |
133 |
148 |
162 |
173 |
182 |
188 |
194 |
199 |
205 |
7ヶ月 |
97 |
119 |
139 |
152 |
166 |
175 |
183 |
189 |
195 |
200 |
206 |
8ヶ月 |
103 |
125 |
143 |
156 |
168 |
176 |
184 |
190 |
196 |
201 |
207 |
9ヶ月 |
109 |
129 |
147 |
158 |
169 |
177 |
185 |
191 |
197 |
202 |
208 |
10ヶ月 |
113 |
133 |
149 |
159 |
170 |
178 |
186 |
192 |
198 |
203 |
209 |
【骨折など、通常程度のケガ(軽傷以外)の場合】
入院 |
|
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
7ヶ月 |
8ヶ月 |
9ヶ月 |
10ヶ月 |
|
通院 |
53 |
101 |
145 |
184 |
217 |
244 |
266 |
284 |
297 |
306 |
||
1ヶ月 |
28 |
77 |
122 |
162 |
199 |
228 |
252 |
274 |
291 |
303 |
311 |
|
2ヶ月 |
52 |
98 |
139 |
177 |
210 |
236 |
260 |
281 |
297 |
308 |
315 |
|
3ヶ月 |
73 |
115 |
154 |
188 |
218 |
244 |
267 |
287 |
302 |
312 |
319 |
|
4ヶ月 |
90 |
130 |
165 |
196 |
226 |
251 |
273 |
292 |
306 |
326 |
323 |
|
5ヶ月 |
105 |
141 |
173 |
204 |
233 |
257 |
278 |
296 |
310 |
320 |
325 |
|
6ヶ月 |
116 |
149 |
181 |
211 |
239 |
262 |
282 |
300 |
314 |
322 |
327 |
|
7ヶ月 |
124 |
157 |
188 |
217 |
244 |
266 |
286 |
301 |
316 |
324 |
329 |
|
8ヶ月 |
132 |
164 |
194 |
222 |
248 |
270 |
290 |
306 |
318 |
326 |
331 |
|
9ヶ月 |
139 |
170 |
199 |
226 |
252 |
274 |
292 |
308 |
320 |
328 |
333 |
|
10ヶ月 |
145 |
175 |
203 |
230 |
256 |
276 |
294 |
310 |
322 |
330 |
335 |
|
任意保険基準の場合
実は入通院慰謝料にも上記で紹介した3種類の慰謝料計算基準が適用されます。
任意保険基準で計算すると、上記で紹介した弁護士基準と比べて3分の2やそれ以下になるケースも少なくありません。
たとえばむちうちで6ヶ月通院した場合、弁護士基準なら89万円程度となりますが、任意保険基準では60~65万円程度にしかならない可能性があります。
骨折で半年通院した場合、弁護士基準なら116万円程度の入通院慰謝料が払われますが、任意保険基準の場合にはやはり60~65万円程度が標準的です。
自賠責基準の場合
自賠責基準で入通院慰謝料を計算するときには、以下の計算式によって算定します。
4,300円×治療期間に対応する日数
治療期間に対応する日数は、以下の2つのうち「小さい方の金額」を採用します。
- 実通院日数×2
- 実際に治療にかかった期間の日数
たとえば症状固定するまでに3ヶ月(90日間)の通院期間がかかった場合、50日通院したら「4,300円×90日=387,000円」となります。
一方で30日しか通院しなかったら「4,300円×30日×2=258,000円」に減額されます。
また自賠責保険では限度額があり、傷害事故については「120万円」が上限です。治療費や休業損害などを支払うと、慰謝料に充てられる部分は多くは残りません。自賠責保険から充分な慰謝料を受け取るのは難しいと考えるべきです。
4-4.後遺障害慰謝料と入通院慰謝料は両方請求できる
交通事故で後遺障害が残った場合「後遺障害慰謝料」と「入通院慰謝料」は両方請求できるのでおぼえておいてください。
保険会社はこの点を、わかりやすく説明してくれないケースも少なくありません。
たとえばむちうちで6ヶ月通院し、12級が認定されたとしましょう。
- 入通院慰謝料…89万円
- 後遺障害慰謝料…290万円
- 合計379万円
本来なら合計で379万円の慰謝料を請求できるはずです。
ところが任意保険会社はこのあたりをきちんと説明せず、「慰謝料は170万円にもなっているので、決して不当ではありません」などと説得してくるケースがあります。
保険会社から示談案を受け取ったら、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の内訳がそれぞれいくらになっているのか、合計金額として適正といえるのかを判断しなければなりません。
自分では示談案が妥当か判定しにくい場合には、弁護士に相談してみてください。
5.弁護士基準で後遺障害慰謝料を受け取るにはどうすればいい?
後遺障害慰謝料も入通院慰謝料も、弁護士基準をあてはめるのか任意保険基準で計算するのかで大きく金額が変わります。
被害者としては法的な権利を実現するためにも弁護士基準で請求すべきといえるでしょう。
弁護士基準を適用するにはどうすればよいのでしょうか?
5-1.自分で示談交渉すると任意保険基準が適用される
多くの交通事故被害者の方は、弁護士に依頼せず「まずは自分で示談交渉してみよう」と考えるものです。
しかしそれでは弁護士基準を適用できません。保険会社は被害者と示談交渉するときのために任意保険基準を設定しているからです。自分で示談交渉すると、相手の任意保険会社が内部的に構築した低額な任意保険基準が適用されるものと考えましょう。
被害者が「弁護士基準で計算してください」といっても聞き入れてもらうのは困難です。「それなら弁護士に依頼してください」といわれるか「これ以上は出せないので裁判してもらうしかありません」などといわれてしまうでしょう。「これでもあなたのために特別に増額しているのです。」などと説得されるケースも少なくありません。
5-2.裁判を起こせば弁護士基準が適用される
実際に裁判を起こすと弁護士基準が適用されます。弁護士基準は裁判所の基準をもとにして作られているからです。
被害者が自分で保険会社に訴訟を提起し「勝訴」すれば高額な慰謝料の支払い命令を出してもらえるでしょう。
ただ素人の方がおひとりで訴訟を進めるのは極めて困難です。訴訟の進行自体が不利になり、敗訴してしまうリスクも高まってしまいます。たとえば被害者側の過失割合を高めに認定されたり、逸失利益を低くされたりする可能性も。被害者側の主張が通らなければ、弁護士基準で慰謝料を計算されたとしても結局は賠償金を低くされてしまうでしょう。
訴訟になると保険会社は顧問弁護士に対応を全面的に依頼するので素人では太刀打ちが困難です。おひとりで保険会社相手に訴訟を提起するのはお勧めではありません。
5-3.弁護士に依頼する
示談交渉の際に弁護士基準で慰謝料を計算するには、弁護士に依頼する必要があります。
弁護士が示談交渉するときには弁護士基準が適用されるので、被害者が自分で交渉していたときよりも一気に後遺障害慰謝料が増額されます。
たとえばむちうちで保険会社から後遺障害慰謝料40万円の提示を受けていた場合でも、弁護士に依頼したら110万円程度にまでアップするケースは少なくありません。
入通院慰謝料も増額されますし、休業損害や逸失利益などの他の賠償項目が増額される可能性もあります。過失割合に争いがある場合には、弁護士が適正な過失割合算定基準を提示することによって被害者側に有利に訂正できるケースもよくあります。
弁護士が介入すると、以下のような点が全体的に修正され、一気に賠償金が増額される可能性があるといえます。
- 慰謝料の計算基準が弁護士基準に変更される
- 後遺障害認定の手続きを受け直して等級が上がる、非該当だったものが等級認定される
- 休業損害が増額される
- 逸失利益が増額される
- 過失割合が被害者に有利に修正される
弁護士介入前と介入後とで5倍以上の開きが発生するケースも珍しくありません。
反対に言うと、同じように後遺障害が残って認定を受けたにもかかわらず、弁護士に依頼しなかったら慰謝料が大幅に減額されてしまうのです。そのようなことは不当であり、受け入れるべきではないといえるでしょう。
5-4.ADRや調停を利用する
実は交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどのADR、裁判所での調停を利用すると、任意保険基準よりは高額な基準で慰謝料を算定してもらえるケースが多数です。弁護士基準とほぼ同様になる可能性もあります。
ただしADRや調停の担当者は被害者の味方というわけではないので注意してください。自分の主張が正しいことは被害者がしっかり説明しなければなりません。
相手が納得しなければ調停は成立しませんし、ADRで審査を受けても主張が通るとは限らないのです。
ADRや調停を有利に進めるためにも、やはり弁護士に依頼する方が安心といえるでしょう。
6.後遺障害等級認定を受ける手続きは?
交通事故で後遺障害慰謝料を受け取るには、「後遺障害等級認定」を受けなければなりません。認定されなければどんなに苦しい後遺症が残っていても、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取るのは難しくなってしまいます。
後遺障害認定の手続きには以下の2種類があります。
6-1.事前認定
任意保険会社の担当者に後遺障害認定を任せる方法です。
被害者は「後遺障害診断書」を取得して相手の任意保険の担当者へ送付するだけで手続きが完了します。ほとんど手間がかからないので、事前認定の方法で後遺障害等級認定の手続きを進める方も多数おられます。
結果は任意保険の担当者から通知されます。
6-2.被害者請求
被害者請求は、被害者自身が自賠責に対して後遺障害等級認定請求をする手続きです。任意保険会社は通さず、自分で保険金の請求を行います。
被害者請求するには、以下のとおりたくさんの書類を集めなければなりません。
- 保険金請求書
- 診断書、診療報酬明細書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 後遺障害診断書
- 検査結果の画像などの資料
- 休業損害証明書
- 交通費の明細書
また自賠責保険や調査事務所から問合せが来たら、その都度対応も必要です。結果は自賠責保険から直接被害者へと通知されます。
このように被害者請求には非常に手間がかかるため、弁護士を立てずに被害者が自分で対応している場合にはハードルが高くなるでしょう。
6-3.被害者請求のメリット
事前認定と被害者請求、どちらの方法が良いのでしょうか?
結論としてできるだけ高額な後遺障害慰謝料を受け取るには、被害者請求を利用すべきと考えます。
事前認定では、相手の保険会社担当者に手続き全般を任せてしまうため、どのような資料がいつどういった方法で提出されているのかなど、まったく明らかになりません。
被害者側に有利になる医師の意見書や追加の検査結果などを提出するのも難しくなるでしょう。
自分で納得のいく方法で後遺障害等級認定の手続きを行い高い等級の認定を受けるには、被害者請求の方が適しています。ご自身で被害者請求の手続きを進めるのは大変ですが、弁護士に依頼すればほとんどすべての対応を任せられます。
手間をかけずに高い等級の後遺障害認定を受けやすくなりますので、後遺障害等級認定の手続きはぜひ弁護士までご依頼ください。
7.弁護士に後遺障害等級認定を依頼するメリット
7-1.手間をかけずスムーズに手続きを進められる
弁護士に後遺障害等級認定の手続きを依頼すると、被害者にはほとんど手間がかかりません。
自分でさまざまな事項を調べて書類を集めたり自賠責保険へ書類を郵送したり調査事務所とやり取りしたりする必要はなく、待っていれば結果がでます。
7-2.高い等級認定を受けやすくなる
交通事故の後遺障害等級認定の手続きに詳しい弁護士に手続きを依頼したら、自分で対応するよりも高い等級の後遺障害認定を受けやすくなるものです。状況に応じて適切な検査資料を集め、医師にも適切な内容の後遺障害診断書を書いてもらうようお願いできるでしょう。
後遺障害等級認定では医学的な知識や医師との連携が必須となりますが、患者と医師の立場ではなかなかうまくコミュニケーションをとりにくいもの。特に交通事故の後遺障害等級認定でどういった対応が必要か、正確に伝えられる方は少数です。
経験豊かな弁護士であれば、医師に必要充分な対処をお願いできるので、医師にも伝わりやすく検査などの資料も揃えやすくなります。
7-3.ストレスが軽減される
交通事故後の対応は被害者にとって非常にストレスの溜まるもの。
保険会社担当者とのやり取りに苦痛を感じ、「これ以上関わりたくないから示談してしまおう」と妥協してしまう方も少なくありません。
本来ならもっと高額な慰謝料を請求できるはずなのに、精神的に辛いために低い金額で示談してしまうケースが多いのです。示談後に「本当はもっと請求できたのに」と後悔しても取り戻すことはできません。
弁護士に依頼すれば被害者自身は対応しなくてよいので、ストレスが溜まることもありません。最大限権利を主張して法的に認められた金額の慰謝料を受け取れますし、日常生活や仕事、治療に専念しやすくなるでしょう。
7-4.介護や病院選びなどの難しい対応も相談できる
後遺障害が残ると、介護や病院選びなどの問題が発生するケースも多々あります。
どこの病院で治療を受ければよいのか、どのような検査を受けるべきか、転院すべきか、介護施設に入所するか自宅介護するかなど。
はじめて経験することばかりで、適正な判断は難しくなりがちです。
普段から重度な後遺障害事案を多く取り扱っている弁護士であれば、これまでの経験に即して介護や病院などについてのアドバイスも可能です。
迷ったときには1度弁護士に相談してみてください。
後遺障害が残ったら横浜クレヨン法律事務所へご相談を!
横浜クレヨン法律事務所では、後遺障害が残った交通事故被害者の方への支援体制を固めています。後遺障害等級認定の手続きから示談交渉まで、幅広く対応しており後遺障害慰謝料が大幅に増額された事例も多数経験して参りました。
後遺障害が残ったら、慰謝料を増額させるためにも、お早めに弁護士までご相談ください。