交通事故でけがをすると、治療を受けても完治せず後遺症が残ってしまうケースも珍しくありません。

もしも痛みやしびれなどの症状が残ったら「症状固定」したタイミングで「後遺障害等級認定」を受けましょう。

後遺障害等級認定を受けると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった賠償金を払ってもらえるので、賠償額が大きくアップします。

今回は交通事故における「症状固定」や「後遺障害等級認定を受けるためのポイント」、後遺障害の種類などについて弁護士が解説します。

交通事故後の後遺症にお悩みの方は是非参考にしてみてください。

1章 交通事故による痛い症状が消えない!それって症状固定では?

交通事故に遭うと、整形外科や脳神経外科などで治療を受けて完治を目指すものです。
しかしすべてのケースで完全に元の状態に戻るわけではありません。さまざまな後遺症が残る可能性があります。

たとえば以下のような後遺症が残るケースが典型です。

  • むちうちになって痛みやしびれがとれない
  • 骨折後、関節を動かしにくくなった、疼痛が発生した
  • 腕や足のしびれが残った
  • 視力や聴力の低下
  • 義足や義手になってしまった
  • 指が失われた
  • 顔に大きな傷跡が残った
  • 歯がなくなった

いくら治療を受けても症状が改善しないなら、それ以上治療を続けても意味がありません。「症状固定」して治療を終了するのが基本の対応です。

症状固定とは

症状固定とは、それ以上治療をしても症状が改善しなくなった状態をいいます。
一般的に、交通事故後の治療は「症状固定時」まで継続すべきです。
治療費や交通費などの費用や休業損害も、症状固定時までの分は請求できます。

一方、症状固定したらそれ以上治療をしても意味がないので治療を打ち切るのが一般的です。症状固定後に自主的に通院するのは自由ですが、保険会社へ治療関係費や休業損害を請求しても払ってもらえません。

症状固定するタイミングの決め方

交通事故後、症状固定すべきタイミングは医学的な判断事項なので、基本的には担当医が決定します。
ただし症状固定時には患者の自覚症状も関係するので、まだ痛みやしびれなどの症状が続いていてしばらくリハビリを続けたい場合などには、希望を医師に伝えてみましょう。
医師が患者の自覚症状についても聞いた上で、症状固定時期を決定することとなります。

なお治療途中で加害者側の保険会社が「そろそろ症状固定です」などと言ってくるケースもありますが、加害者側の保険会社に症状固定時期を決める権限はありません。

納得できなければ従う必要はないので、通院を継続しましょう。治療費を打ち切られたら健康保険を適用して治療を受けると費用を抑えられます。

また症状固定するまでの治療費は保険会社へ請求できるので、窓口で立て替えた医療費や交通費は後に示談するときにまとめて支払いを求めましょう。

2章 症状固定したら「後遺障害等級認定」を申請する

交通事故で症状固定したら「後遺障害等級認定」の手続きへ進みます。

後遺障害等級認定とは

後遺障害等級認定とは、交通事故の被害者に残った後遺症を内容や程度、種類などによって分類し、14段階の「等級」というランクをつける制度です。

ひとことで「後遺症」といってもさまざまです。日常生活に大きな支障が及ぶものもあれば、軽いものもあるでしょう。目や耳、腕や足、全身、脳障害など発生する部位もケースによって異なります。
そこで、同レベルの後遺症には同等の賠償金が払われるように「後遺障害」として正式認定する制度が作られています。

後遺障害には1級から14級までの等級(段階)があり、1級が最も重症で14級が最も軽症です。1級に認定された場合の賠償金がもっとも高額で、14級はもっとも低額となります。

後遺障害等級認定を受け付けるのは加害者側の自賠責保険(共済)なので、症状固定したら早めに自賠責宛に後遺障害等級認定の申請をしましょう。

後遺障害の例

交通事故の後遺障害には多くの種類があるので、以下でよくある例を示します。

むちうち後の痛みやしびれ

追突事故などに遭ってむちうちになり、後遺障害が残るパターンです。
痛みやしびれの症状がいつまでも消えない場合、後遺障害認定を受けられる可能性があります。

骨折による後遺障害

骨折すると、以下のような後遺障害が残る可能性があります。

  • 腕や脚の欠損…腕や脚の一部や全部を失う後遺障害です。
  • 関節を曲げられない…関節を動かせない、動かしにくくなって可動域が制限される後遺障害です。
  • 変形障害…骨が変形してしまう後遺障害です。
  • 偽関節…本来関節でない場所が関節のような不自然な動きをしてしまう後遺障害です。
  • 短縮障害…脚の一本が他方より短くなって歩きにくくなる後遺障害です。
  • 疼痛…骨折後に、骨折部に疼痛(痛み)が残ってしますことです。

外貌醜状

頭や首、顔の露出部分に一定以上の大きな傷跡が残った場合に認定されます。

脳障害

認知機能が害される高次脳機能障害、てんかん発作、植物状態になってしまう遷延性意識障害などがあります。

脊髄損傷

脊髄を損傷すると、腕や脚がまひしたり排尿排便障害や運動機能、感覚の亡失などの症状が出たりして重度の後遺障害が残るケースも多々あります。

上記以外にも、失明や視力の低下、聴力低下、嚥下障害、言葉を話せなくなる障害、PTSDなどさまざまな後遺障害があります。

「自分も後遺障害等級認定を受けられるのではないか?後遺障害の種類について知りたい」という方は、弁護士までお気軽にご相談ください。

3章 後遺障害等級認定を受ける必要性やメリット

交通事故後、後遺症が残っても後遺障害等級認定を受けなければならない義務はありません。

ただ後遺障害として認定されると、認定された等級に応じて高額な賠償金を受け取れるメリットがあります。
反対にいうと、辛い後遺症が残っても後遺障害等級認定を受けなければ「通常の傷害事故」程度の賠償金しか払ってもらえません。適正に後遺障害に対する補償を受けるには、後遺障害等級認定を受けるべきです。

後遺障害等級認定を受けると、通常の傷害事故の賠償金に加えて以下の2種類の賠償金が払われます。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことによって被害者が受ける精神的苦痛に対する賠償金です。
後遺障害が残るとそれまでのように体が自由にならず、日常生活や仕事でもさまざまな支障が出て被害者は大きな精神的苦痛を受けるでしょう。そこで認定等級に対応した後遺障害慰謝料が払われます。

後遺障害慰謝料の金額は以下のとおりです。

認定等級 弁護士・裁判基準(相場) 自賠責基準
1級 2800万円 1150万円(要介護1650万円)
2級 2370万円 998万円(要介護1203万円)
3級 1990万円 861万円
4級 1670万円 737万円
5級 1400万円 618万円
6級 1180万円 512万円
7級 1000万円 419万円
8級 830万円 331万円
9級 690万円 249万円
10級 550万円 190万円
11級 420万円 136万円
12級 290万円 94万円
13級 180万円 57万円
14級 110万円 32万円

弁護士・裁判基準は弁護士が示談交渉するときや裁判所が判決を下すときなどに適用する法的な基準です。
自賠責基準は自賠責保険や共済が保険金、共済金を払う際の基準です。

上記の他、任意保険会社が独自に定める任意保険基準もあります。任意保険基準は、任意保険会社と被害者が示談交渉するときに適用される基準です。

3つの基準を比較すると、弁護士・裁判基準がもっとも高額になり、他の基準の2~3倍程度の相場となります。

交通事故の後遺障害慰謝料は、弁護士基準で計算しないと損をしてしまうともいえるでしょう。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益は、後遺障害のために労働能力が低下し、失われた将来の収入に対する補償です。
後遺障害が残ると、事故前のようには働けなくなるため、生涯収入が低下すると考えられるので、逸失利益として補償を受けられます。

ただし後遺障害逸失利益はすべての被害者へ払われるわけではありません。請求できるのは基本的に「事故前に仕事をしていた人」です。会社員、アルバイト、自営業者などの方には逸失利益が認められます。

また以下のような人は実収入を得ていなくても後遺障害逸失利益を請求できます。

  • 子ども
  • 学生
  • 働く意欲と能力があって就労の蓋然性(可能性が高いこと)があった一時的な失業者
  • 主夫や主婦などの家事労働者

後遺障害逸失利益の金額は、事故前の年収や被害者の年齢、認定等級によって異なります。
事故前の年収が高く認定等級が高い場合、逸失利益の金額が1億円を超えるケースも珍しくありません。

慰謝料以上に高額になるケースが多いので、後遺障害が残ったら必ず逸失利益を適切に計算して請求すべきです。

4章 症状固定後の後遺障害等級認定の2つの方法

症状固定したら後遺障害等級認定を受けるべきですが、後遺障害等級認定の手続きには2種類があります。
以下でそれぞれの手順を紹介します。

事前認定

1つ目は「事前認定」という方法です。事前認定とは、加害者側の保険会社へ後遺障害等級認定の手続きを任せる方法をいいます。
手順は簡単で、被害者は医師に依頼して「後遺障害診断書」を作成してもらうだけでかまいません。

後遺障害診断書とは、後遺障害の内容に特化した特別な書式の診断書です。自賠責に診断書書式があるので、取り寄せて医師に渡しましょう。
診断書を書いてもらったら、保険会社の担当者宛に送付して後遺障害等級認定の手続きを依頼します。その後は個別のケースにもよりますが、2~4か月程度で結果が出て相手の保険会社の担当者から通知される例が多数です。

事前認定のメリット

事前認定のメリットは、手続きが簡単なことです。
医師に後遺障害診断書を依頼して保険会社へ送付すれば、基本的には他にすべき事項はありません。待っていれば後遺障害等級認定の結果が出ます。

事前認定のデメリット

デメリットは、自主的に後遺障害等級認定の手続きを進められないことです。
相手の保険会社が具体的な手続きを行うので、実際にどういった方法で審査されているのかがまったくわかりません。
被害者が追加的に自分に有利になる資料を提出するのも、難しくなってしまいます。

後遺障害等級認定されるかどうか微妙な事案では、認定されなかったときに不満が残りやすくなるでしょう。

被害者請求

被害者請求は、被害者自身が自賠責保険や共済へ直接後遺障害等級認定の請求をする方法です。
後遺障害診断書だけではなく、請求に必要なさまざまな書類を揃えて提出する必要があります。

必要書類

  • 被害者請求に必要な書類は以下のとおりです。
  • 保険金の支払請求書…請求者が自分で作成します。
  • 請求者の印鑑証明書…居住している地域の役所で取得します。
  • 交通事故証明書…窓口や郵送で取り寄せます。
  • 事故発生状況報告書…請求者が自分で作成します。
  • 診断書や施術証明書…病院や整骨院から取り寄せます。
  • 診療報酬明細書…病院から取り寄せます。
  • 後遺障害診断書…担当医に作成してもらいます。
  • レントゲンやCT、MRIなどの検査結果…病院から受け取ります。

上記の他にも資料が必要となる可能性があります。

被害者請求の手順

STEP1 請求用書類を取り寄せる

被害者請求を行う場合、まずは自賠責保険へ連絡して請求用の書類一式を取り寄せる必要があります。

STEP2 必要書類を用意する

次に保険金請求書や事故発生状況報告書などの書類を作成します。
印鑑証明書や診断書などの必要書類も取り寄せなければなりません。
医師に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。

STEP3 保険会社へ提出する

必要書類が揃ったら、まとめて保険会社へ提出します。
提出後、自賠責の調査事務所から資料の補完や追加を依頼されるケースもあります。
症状の内容によっては被害者が自賠責の調査事務所へ行って面談しなければなりません。

STEP4 結果が通知される

結果が出たら、自賠責保険から直接通知されます。

被害者請求のメリット

被害者請求のメリットは、被害者が自主的に後遺障害等級認定の手続きを進められる点です。
上記で紹介した必要書類以外にも、医師の作成した意見書や追加の検査結果、被害者や家族による報告書などを提出してかまいません。
自分で積極的に手続きを進められるので透明性が確保され、結果に納得しやすくなるでしょう。
結果的に後遺障害認定を受けられる可能性が高まるケースもよくあります。
むちうちで後遺障害認定されるかどうか微妙な案件、等級が何級になるか微妙な案件などでは事前認定よりも被害者請求の方が適しているといえるでしょう。

被害者請求のデメリット

被害者請求のデメリットは手間がかかる点です。
たくさんの書類を集めなければならないので、申請するだけでも大きな労力がかかります。
また積極的に資料を提出できるといっても、素人の方ではどういったものが効果的か判断するのが難しいでしょう。
1人では被害者請求の利点を活かしきれないケースが多数です。

被害者請求のメリットを最大限に活かしてより高い後遺障害の等級認定を受けるには、専門家である弁護士によるサポートが必要です。

むちうちや骨折などの症状が出て後遺症が残ったら、早めに弁護士へ相談しましょう。

5章  後遺障害等級認定を受けるためのポイント

以下では症状固定後に後遺障害等級認定を受けるためのポイントをお伝えします。

必要十分な検査を受ける

まずは十分な検査を受けて後遺障害の内容を証明する資料を用意しましょう。
後遺障害等級認定ではレントゲン、CTやMRIなどの画像による資料が重視されます。
むちうちの場合などには神経学的検査が役に立つ場合も多々あります。
症状の内容に応じて必要十分な検査を受けて、客観的な資料を集めましょう。

適切に後遺障害診断書を作成してもらう

後遺障害診断書の内容も非常に重要です。
少しでも不適切な内容が記載されていると、それだけで後遺障害認定されなくなってしまう可能性もあります。
できれば交通事故の後遺障害について知識のある医師に作成を依頼するのが望ましいでしょう。そうでない場合、弁護士から医師へ書き方を説明することもできるので、依頼する弁護士に相談してみるのも一手です。

被害者請求を行う

後遺障害の内容が明らかで等級もほぼ確定している場合でないなら、被害者請求が適しているケースが多数です。事前認定ではどうしても認定を受けにくくなってしまう傾向があるためです。

ただし必ず被害者請求を行うべきという意味ではありません。状況に応じた対応が好ましいので、まずは弁護士へ相談してみてください。

交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士へ依頼する

後遺障害等級認定の手続きを被害者が1人で進めると、どうしても知識やスキルが不足して非該当となったり等級を下げられたりするリスクが高まります。
後遺障害等級認定の手続きは、できるだけ交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に依頼するのが得策といえるでしょう。

弁護士費用特約を使えば被害者に弁護士費用の負担がほぼ発生しません。
事故に遭ったら、まずは加入している自動車保険の内容を確認してみてください。

6章 まとめ

横浜クレヨン法律事務所では交通事故で症状固定した後の後遺障害認定サポートへ力を入れて取り組んでいます。事故後の後遺症に苦しまれている方は、お気軽にご相談ください。