交通事故に遭うと、「相手から慰謝料をどのくらい払ってもらえるのだろう?」と心配になるものです。
他の交通事故被害者の方が実際に「いくらもらったのか」知っておくと、ご自身のケースでも役に立つでしょう。

今回は交通事故の慰謝料をいくらもらえるものなのか、症状別や通院期間別の慰謝料相場をご紹介します。

できるだけ高額な慰謝料を受け取るための工夫もお伝えしますので、事故の遭われた方はぜひ参考にしてみてください。

目次

1章 交通事故の慰謝料の金額は被害者の受傷状況によって大きく異なる!

交通事故に遭うと、慰謝料をいくら払ってもらえるのでしょうか?

実は交通事故の被害者が受け取れる慰謝料の金額は、個別のケースによって大きく異なります。

慰謝料とは事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金です。
事故の規模や被害者の受けたケガの程度、後遺症が残ったかどうかなどの事情により、被害者が受ける精神的苦痛の大きさはまったく違ってくるでしょう。
たとえば重大な事故で被害者に一生介護を必要とする後遺症が残ったら、被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、慰謝料の金額は当然高額になります。

一方、軽傷ですぐに完治した場合にはさほどの精神的苦痛を受けません。慰謝料額は少額になります。

そこで交通事故の損害賠償金を算定する際には、一定の計算基準をもうけて被害者のケガの程度により、公平に慰謝料額を計算できるようにしています。

2章 交通事故の慰謝料計算基準は3種類

以下では交通事故の慰謝料計算方法や相場を確認しましょう。
なお慰謝料は、基本的に「人身事故」に遭った方が加害者へ請求できるものです。物損事故では慰謝料請求できません。物損事故の場合、被害者は慰謝料が発生するほどの精神的苦痛を受けないと考えられるためです。

慰謝料の計算方法は一律ではありません。保険会社の適用する基準と法律的な基準があります。自賠責と任意保険会社でも計算方法が変わるので、慰謝料計算方法は合計で3種類となります。

慰謝料計算方法の3つの基準

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準(裁判基準)

自賠責基準

自賠責基準は自賠責保険や共済が保険金(共済金)を計算する際に適用する基準です。
金額的には3つの基準の中でもっとも低額になります。

任意保険基準

任意保険基準とは、各任意保険会社が独自に定めている計算基準です。被害者が任意保険と示談交渉する際には任意保険基準が適用されます。

弁護士基準

弁護士基準は弁護士や裁判所が適用する法的な基準です。被害者には法的な権利が保障されているので、本来被害者は弁護士基準で慰謝料を請求できる権利を持っています。
金額的には3つの基準の中でもっとも高額になるので、事故に遭ったら基本的に弁護士基準で計算した慰謝料を払ってもらうべきです。

3章 慰謝料が増額されるケースとは

状況によっては慰謝料が平均額より増額される可能性があります。
通常の事案よりも被害者が受ける精神的苦痛が大きいと考えられるためです。
たとえば以下のような場合、慰謝料が相場より上る可能性が高くなるでしょう。

被害者が特に大きな苦痛を伴った

事故現場や治療過程において、被害者が強い痛みを感じたり何度も手術が必要となったり大きな負担がかかったりすると、被害者の精神的苦痛は大きくなると考えられるので、慰謝料が通常よりも高額になる可能性があります。

退職した、廃業した

事故に遭うと、被害者が仕事を続けられなくなるケースも少なくありません。
会社員が退職を余儀なくされたり、自営業者が廃業せざるを得なくなったりすると慰謝料が増額される可能性があります。

留年した、退学した、入学できなくなった

学生が事故に遭うと、勉強を続けられなくなる可能性があります。
たとえば退学を余儀なくされた場合、留年してしまった場合、留学を諦めた場合、入学できなくなってしまった場合などには慰謝料が増額されやすい傾向がみられます。

離婚した

事故に遭い、配偶者との関係がうまくいかなくなって離婚を余儀なくされるケースもあります。離婚すると人は通常大きな精神的苦痛を受けると考えられるので、慰謝料が増額される可能性が高いといえます。

流産した、中絶した

妊娠中の方が交通事故に遭うと、子どもをあきらめざるを得なくなる可能性があります。
たとえばレントゲン写真を撮影すると子どもに影響が及ぶので、中絶せざるを得ないケースが多数です。事故の衝撃で流産してしまうこともあるでしょう。

事故によって流産や中絶をすると被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、慰謝料が増額されます。

加害者の態度が不誠実

事故の加害者の態度が不誠実な場合にも慰謝料が増額される事例があります。
不誠実な態度をとられると、被害者は大きな精神的苦痛を受けると考えられるからです。
加害者が任意保険に入っていない場合に慰謝料が増額される可能性もあります。

逸失利益が否定された、低くなった

交通事故で被害者に後遺障害が残ると、基本的には「逸失利益」を請求できます。
逸失利益とは、後遺障害の影響で労働能力が低下し、将来得られなくなってしまった収入に対する補償です。
ただし後遺障害の内容によっては逸失利益が否定されたり減額されたりするケースもあります。たとえば味覚障害や嗅覚障害、痛みなどをともなわない骨の変形障害、外貌醜状(顔や首、頭などに残った傷跡)が残った場合、仕事に支障が出ていないとして逸失利益が否定される事例が少なくありません。

このように逸失利益が否定されたり減額されたりすると、その分慰謝料を増額してもらえる可能性があります。慰謝料には逸失利益の「調整機能」があるのです。

交通事故で正確に慰謝料の金額を計算するには、上記のような個別事情も考慮しなければなりません。疑問がある場合にはお気軽に弁護士に相談してみてください。

4章 症状別の慰謝料相場と事例紹介

交通事故で払ってもらえる慰謝料の金額は、症状によっても異なります。
以下では症状別に慰謝料をいくらもらえるのか、相場や事例をご紹介します。

むちうちの場合

交通事故に遭うと「むちうち」になってしまう被害者の方が非常にたくさんおられます。
むちうちとは、追突された衝撃などで首の骨(頚椎)が衝撃を受けて神経や軟部組織等を損傷してしまう症状の総称(医学用語ではなく一般的な呼称)です。
典型的な症状は、首や肩、背中などに痛みやしびれなどですが、頭痛やめまい、耳鳴り、吐き気、食欲不振、起立性の強い頭痛などを伴うケースもあります。

むちうちの慰謝料相場は「入通院した期間」と「後遺障害認定受けられたかどうか」によって大きく変わります。

状況別にみてみましょう。

通院3か月で完治(自覚症状のみ)

痛みやしびれなどの自覚症状のみで、通院3か月して完治した場合には「入通院慰謝料」を請求できます。金額的には53万円程度が相場となります。

通院6か月で完治(自覚症状のみ)

痛みやしびれなどの自覚症状のみで、通院6か月で完治した場合には、慰謝料額は89万円程度となります。

通院10か月、後遺障害14級(自覚症状のみ)

痛みやしびれなどの自覚症状のみで、通院10か月で症状固定し、後遺障害が残ったので後遺障害認定を受けたケースです。認定等級は14級としましょう。
この場合、入通院慰謝料の金額は113万円程度、後遺障害慰謝料の金額は110万円程度となるので、合計で223万円程度の慰謝料を払ってもらえます。

通院8か月、後遺障害12級(他覚症状あり)

むちうちでも重傷の場合、組織や骨などに異常がみられるケースがあります。こうした症状をMRIやCTなどで証明できる場合「他覚症状あり」といわれます。むちうちでも他覚症状があると、入通院慰謝料額が増額されます。

また後遺障害12級の認定を受けると後遺障害慰謝料も払われるので、さらに慰謝料が上がります。

金額的には入通院慰謝料額が132万円程度、後遺障害慰謝料額が290万円程度となるので、合計で422万円程度の慰謝料を払ってもらえるでしょう。

骨折の場合

次に骨折した場合の慰謝料相場や事例を紹介します。

通院5か月で完治

骨折して通院5か月で完治した場合、入通院慰謝料の相場は105万円程度となります。

入院1か月、通院8か月で完治

骨折して1か月入院し、その後8か月通院して完治した場合の慰謝料相場は164万円程度です。

入院2か月、通院10か月、後遺障害9級

骨折して2か月入院し、その後10か月間通院したけれども完治せず後遺症が残ったケースです。後遺障害9級が認定されると、高額な後遺障害慰謝料が払われるので、慰謝料額が大きく増額されます。

金額的には入通院慰謝料が203万円程度、後遺障害慰謝料の金額が690万円程度となるので、合計で893万円程度の慰謝料を請求できるでしょう。

入院2か月、通院10か月、後遺障害7級

骨折して2か月入院し、その後10か月通院したけれども後遺症が残って後遺障害7級が認定されたケースです。この場合、後遺障害の認定等級が高いので、後遺障害慰謝料額が1000万円となります。

入通院慰謝料が203万円程度なので、合計すると慰謝料額は1203万円が相場となります。

高次脳機能障害の場合

交通事故が原因で「高次脳機能障害」になってしまう方も少なくありません。
高次脳機能障害とは、脳の認知機能の障害です。記憶力や集中力、物事の遂行能力が低下したり、日常生活で普通にできていたことができなくなったりします。
人格が変わって怒りっぽくなったりうつっぽくなったりする方もおられます。
いわゆる「認知症」に似た症状が出ると考えましょう。

高次脳機能障害になると、後遺症が残るケースも多々あります。

入院2か月、通院8か月、後遺障害5級

入院2か月、通院8か月を経て症状固定し、後遺障害5級の認定を受けたケースです。
入通院慰謝料の金額は194万円程度、後遺障害慰謝料の金額は1400万円程度なので、合計で1594万円程度の慰謝料を請求できます。

入院4か月、通院10か月、後遺障害3級

入院4か月、通院10か月を経て症状固定し、後遺障害3級の認定を受けたとしましょう。
この場合、入通院慰謝料の金額は256万円、後遺障害慰謝料の金額は1990万円程度となります。合計すると2246万円程度の慰謝料を請求できるでしょう。

遷延性意識障害(植物状態)となった場合

遷延性意識障害とは、いわゆる「植物状態」を意味します。植物状態になると本人はほとんど自分で何もできなくなるので、後遺障害1級が認定されます。
たとえば入院7か月で症状固定して後遺障害1級が認定された場合、慰謝料額は以下のとおりとなります。

入通院慰謝料が266万円、後遺障害慰謝料は2800万円、合計で3066万円。

死亡した場合

交通事故で被害者が死亡すると、被害者自身は非常に大きな精神的苦痛を受けると考えられます。また遺族としても被害者を失って精神的苦痛を被るでしょう。そこで被害者本人と遺族の死亡慰謝料を請求できます。
また死亡するまでに入院期間があると、その分の入院慰謝料も請求できます。

以下では死亡した場合に慰謝料をいくらもらえるのか、事例をもとにみてみましょう。

妻と子どものいる男性が死亡

被害者が一家の大黒柱だった場合、死亡慰謝料の相場は2800万円です。

配偶者が死亡

被害者が配偶者だった場合の死亡慰謝料の相場は2500万円程度です。

子ども

被害者が子どもだった場合の死亡慰謝料の相場は2000~2500万円程度で、事情に応じて決定されます。

任意保険基準の場合には慰謝料が減額される

上記でご紹介した慰謝料の金額は、すべて弁護士基準で計算したものです。任意保険基準を適用すると、上記より大きく減額されると考えましょう。
たとえば任意保険基準の入通院慰謝料は弁護士基準の5~8割程度になる可能性があります。後遺障害慰謝料の場合、2分の1~3分の1程度となるケースが多数です。

被害者が自分で任意保険会社と示談交渉をすると、低額な任意保険基準を適用されるので、上記でご紹介したほどの慰謝料は払ってもらえません。
弁護士基準で高額な慰謝料を請求するには示談交渉を弁護士へ依頼する必要があります。

5章 通院期間別の慰謝料相場と事例

交通事故でケガをしたら、一定期間通院して完治する方も多いでしょう。
そこで以下では通院期間別の慰謝料相場や事例をご紹介します。

打撲で通院1週間

事故の衝撃で打撲し、1週間程度の通院で完治した場合の慰謝料額は4万4300円程度です。
1週間程度の通院でも慰謝料は払ってもらえるので、放置せずにきちんと病院へ通いましょう。その間の治療費や休業損害も請求できます。

捻挫で通院2週間

事故で捻挫してしまい、整形外科へ2週間通って完治した場合の慰謝料額は9万5千円程度です。
軽い捻挫でも通院さえすれば慰謝料を請求できるので、事故でケガをしたら必ずすぐに整形外科へ行きましょう。

むちうちで通院1か月(自覚症状のみ)

軽いむちうちで痛みやしびれなどの患者の自覚症状しかない場合、1か月通院したとしましょう。
この場合、入通院慰謝料として19万円程度請求できます。

むちうちで通院6か月(自覚症状のみ)

むちうちの場合でも、通院期間が長くなると慰謝料額は上がります。
痛みやしびれなどの自覚症状しかない場合で6か月通院した場合の慰謝料額は、89万円程度となります。

むちうちで通院6か月(他覚症状あり)

むちうちでもMRIやレントゲンなどで異常を確認できる場合、自覚症状しか無いケースより慰謝料額が上がります。
他覚症状があって6か月通院した場合、慰謝料額の相場は116万円程度となります。

骨折で通院8か月

骨折すると、数か月は通院しなければならないケースが多いでしょう。8か月通院すると、入通院慰謝料として132万円程度請求できます。

むちうちで通院10か月(他覚症状あり)

むちうちでもMRIなどで他覚症状があって10か月程度通院すると、慰謝料額は145万円程度になります。

以下では通院期間別の慰謝料額の相場表を掲載します(弁護士基準)。

・軽傷や自覚症状しかないむちうちの通院慰謝料

通院期間通院慰謝料額(万円)
1か月19
2か月36
3か月53
4か月67
5か月79
6か月89
7か月97
8か月103
9か月109
10か月113

・通常程度のケガの通院慰謝料

通院期間通院慰謝料額(万円
1か月28
2か月52
3か月73
4か月90
5か月105
6か月116
7か月124
8か月132
9か月139
10か月145

6章 後遺障害認定を受けると慰謝料が増額される!

交通事故に遭った場合「後遺障害等級認定」を受けるとより高額な慰謝料を請求できます。後遺障害等級認定とは、交通事故の後遺障害に14段階の等級をつけて正式に認定する制度です。自賠責保険や共済が窓口となっています。

後遺障害等級認定を受けると、入通院慰謝料だけではなく後遺障害慰謝料が加算されるので、慰謝料額が大幅にアップします。

交通事故で治療を終えても完治せず後遺症が残ったら、必ず後遺障害等級認定を受けましょう。

等級別の後遺障害慰謝料の表

等級弁護士基準自賠責基準
1級2800万円1150万円(要介護1650万円)
2級2370万円998万円(要介護1203万円)
3級1990万円861万円
4級1670万円737万円
5級1400万円618万円
6級1180万円512万円
7級1000万円419万円
8級830万円331万円
9級690万円249万円
10級550万円190万円
11級420万円136万円
12級290万円94万円
13級180万円57万円
14級110万円32万円

任意保険基準による後遺障害慰謝料の相場は自賠責基準より多少高い程度となるケースが多数です。

後遺障害等級認定の結果に納得できない場合

交通事故で後遺障害等級認定の請求をしても、期待通りの結果が出るとは限りません。特に自覚症状しかないむちうちの場合、MRIなどの画像検査資料で症状を証明できないので「非該当(後遺障害なし)」とされてしまうケースが多々あります。

もしも後遺障害等級認定の結果に納得できない場合には、以下のように対応しましょう。

異議申し立て

1つ目の方法は、自賠責保険や共済に対して異議を申し立てる手続きです。
異議を申し立てると、再審査を依頼できます。
ただし同じ機関(自賠責)が審査を担当するので、結果が変わる可能性は高くはありません。
1回目と同じ方法で審査を求めても結果は同じになるのが目に見えているので、異議申し立てをするなら必ず新しい診断書や検査資料などの医証を用意すべきです。

自賠責保険共済紛争処理機構を利用

異議申し立てをしても結果が変わらなかった場合、自賠責保険共済紛争処理機構という機関を利用する方法も検討しましょう。
自賠責保険・共済紛争処理機構とは、自賠責関係の紛争を解決するための専門機関です。
後遺障害等級認定の結果に納得できない場合に機構へ申立をすると、機構で審査をしてもらえます。
自賠責保険・共済紛争処理機構は自賠責保険や共済とは異なる組織なので、異なる観点から判断をしてくれます。異議申し立てが通らなかった場合でも、判断が変更される可能性があるでしょう。

ただし書面審査となるので、的確な資料を提出して被害者側の言い分をわかりやすくまとめなければなりません。被害者が1人で対応するのはハードルが高くなるケースも多々あります。

裁判を起こす

最終手段として、裁判を起こす方法があります。訴訟をすると、裁判所が適正な後遺障害等級を認定してくれます。裁判所は自賠責からも紛争処理機構からも独立しているので、自賠責などの判断とは異なる結果を得られる可能性も高くなるでしょう。

ただし裁判で主張を認めてもらうには、法的に適正な主張を行い的確な立証をしなければなりません。素人では対応が困難なので、必ず弁護士へ依頼しましょう。

7章 交通事故の示談金の相場

交通事故の示談金に相場はあるのでしょうか?
ケガをしていない場合や物損事故でも示談金の支払いを受けられるのかも含め、みていきましょう。

示談金とは

示談金とは、交通事故の被害者側と加害者側が話し合って具体的な損害賠償金額について取り決めたときに加害者が被害者へ支払うお金です。

示談金は慰謝料とは異なります。
慰謝料は発生した損害の中でも「精神的損害」に対する賠償金です。
一方示談金は精神的損害だけではなく実際に発生した費用や得られなくなってしまった収入補償なども含みます。よって一般的には示談金の方が慰謝料額より高額になります。

また示談金として払われるのは「過失相殺」が行われた後の金額です。過失相殺とは、被害者に過失がある場合にその程度に応じて賠償金額が減額されることです。

被害者側の過失割合が高ければ支払われる示談金額がその分減額されます。
以上を前提に交通事故のパターンごとに示談金の相場をみていきましょう。

交通事故の示談金のケース別の相場

むちうちで3か月程度の通院

むちうちで3か月程度通院した場合、被害者が有職者であれば休業損害が発生するので示談金額が上がります。

具体的な金額はケースによりますが、およそ60~100万円程度(慰謝料弁護士基準で53万円+α)になる事案が多いでしょう。なお治療費については病院へ直接払いされているものと考えます。

ただし被害者側に過失割合があると、過失相殺されるので、上記より低い金額になります。

むちうちで6か月程度の通院、後遺障害認定14級の認定を受けた

むちうちで6か月程度通院し、後遺障害14級の認定を受けた場合には、後遺障害に対する補償が行われるので示談金額が大幅に上がります。

被害者が有職者の場合には、示談金の金額は250~300万円以上となる可能性が高いでしょう。

ただし被害者に過失があれば上記より低い金額となる可能性があります。

骨折で10か月程度の入通院、後遺障害10級の認定を受けた

骨折して10か月程度入通院治療を受けて後遺障害10級の認定を受けた場合、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるので示談金額が高額になります。

事故前に仕事をしていた方を前提とすると、1000万円を超える示談金が支払われる可能性もあります。

ただし被害者に過失があると、過失相殺によって減額されます。事故前に働いていなかった方の場合には逸失利益や休業損害を請求できないので、やはり示談金額は低くなるでしょう。

怪我しなくても示談金はもらえる?

交通事故の示談金は、ケガをしていなくても受け取れる可能性があります。
示談金には以下のような項目が含まれるからです。

【物損を対象とした賠償金の例】

  • 車の修理費用
  • 車の買い替え費用
  • 買い替えにかかった諸費用
  • 代車費用
  • 評価損害
  • 営業損害

【人身損害を対象とした賠償金の例】

  • 治療費や交通費など
  • 休業損害
  • 慰謝料
  • 逸失利益
  • 介護費用
  • 家のリフォーム代

車の修理費用などの示談金は物損被害に対しても支払われるので、ケガをしていなくても支払ってもらえるのです。

物損事故で、きちんと損害賠償金額を計算して請求しましょう。

8章 治療期間で入通院慰謝料はかわる

交通事故の入通院慰謝料は、治療期間や日数によって変わります。
治療期間が長く日数の多い方が、被害者の受ける精神的苦痛も大きいと考えられるからです。

骨折した場合やむちうちになった場合、治療期間がどのくらいかかるのか目安の期間をみてみましょう。

交通事故で骨折した場合の治療期間の目安

一言で「骨折」といっても、重傷のケースも軽傷のケースもあって状況はさまざまです
軽くヒビが入った程度で安静にしていれば良くなる場合、1か月程度で治癒するケースもあります。

一方複雑骨折で何度も手術が必要になったら1年以上かかる事案もあります。
骨折である程度重傷な場合、一般的には半年~1年程度は治療期間にかかると考えるとよいでしょう。

むちうちの治療期間の目安

むちうちも個別ケースによって大きく治療期間の異なる傷病です。

軽い場合には1か月で治癒することもありますが、長引くと1年以上通院し続けなければなりません。

途中で通院を打ち切ると慰謝料額を減らされてしまうので、医師が「完治」または「症状固定」と判断するまで通院を継続しましょう。

整骨院に通院した場合も治療期間にカウントできる

交通事故でむちうちになると、整骨院で治療を受けられる方が多数おられます。
整骨院での治療日数も「治療期間」にカウントして治療費、慰謝料や休業損害の計算根拠にできるのでしょうか?
結論的には整骨院に通っても治療費などの賠償金を請求できる可能性はあります。
ただし被害者の独断で通院しても、支払いを拒否されるリスクが高くなります。

治療期間に入れてもらうには、病院と同時に通院することが必須であり、できれば、医師による通院許可を得た方がよいでしょう。病院に並行して通わなかったり、医師の許可がないまま通うと、保険会社から拒否される可能性が高まります(必ず支払い拒否されるわけではありません)。

整骨院へ通う場合、通院開始する前に整形外科へ通い、症状が落ち着いた頃に医師に整骨院への通院を打診しましょう。医師が同意すれば、保険会社側も示談金の支払いを拒否する可能性が低くなります。

自己判断で整骨院や接骨院だけに通ってしまうと、整骨院にかかった治療費や交通費、発生した休業損害などの支払いを受けられない可能性もあるので、なるべく保険会社や、弁護士などと相談し、自己判断しないように注意しましょう。

9章 軽症でも後遺障害等級認定されるケースとは

交通事故で軽症でも後遺障害認定される可能性があるのでしょうか?
「軽症」の意味にもよりますが、本当にごく軽いけがなら後遺障害認定を受けるのは難しくなるでしょう。たとえば打撲や捻挫、小さな切り傷程度では後遺障害が残らないのが一般的です。

ただし一見軽症に見えても実は相当なケガをしているケースもみられます。
たとえば単なる捻挫に見えても、神経に異常が出ている場合や、脊柱を圧迫骨折している場合などです。
そういった状況があれば、後遺障害認定される可能性が十分にあると考えましょう。

ご自身の症状について疑問があるなら、自己判断せずに専門医に相談してみるようおすすめします。

10章 死亡事故の慰謝料や賠償金

死亡事故の賠償金や慰謝料はどのくらいに算出されるケースが多いのか、みてみましょう。

死亡事故の賠償項目

死亡事故に遭うと、原則として以下のような賠償金が払われます。

  • 葬儀費用
  • 死亡慰謝料
  • 死亡逸失利益
  • 死亡するまでのケガに対する賠償金

以下で個別にご説明します。

葬儀関係費用

葬儀関係費用としては原則として、およそ150万円を限度としてかかった費用を請求できます。ただし状況によりそれより高額な請求が認められるケースもあります。

死亡による逸失利益

被害者が死亡してしまうとはたらけなくなって収入を得られなくなるため、その損失を逸失利益として請求できます。

計算式としては、事故前の被害者の年収をもとにして、生活費を控除して就労可能年数分の逸失利益を算出します。事故前に既に退職していても、老齢年金や障害年金は逸失利益の対象となります。

死亡慰謝料

被害者本人や近親者(遺族)は死亡によって大きな精神的苦痛を受けるので、死亡慰謝料を請求できます。弁護士基準の場合、おおよそ2,000~2,800万円程度になります(被害者に被扶養者がいるかどうかで数字が異なります)。

死亡するまでの怪我による損害

事故に遭っても被害者が即死せずにしばらく入院してから死亡に至った場合には、死亡するまでのケガについても補償が行われます。

以下のような賠償金が支払われると考えましょう。

  • 治療関係費(医療費や薬代、交通費などです)
  • 付添看護費用(1日あたり6500円程度)
  • 入院雑費(1日あたり1500円程度)
  • 休業損害(平均収入日額×休業日数)
  • 入通院慰謝料

交通事故の損害額を計算するのは簡単ではありません。どの算定基準をあてはめるかでも示談金額が大きく変わってきます(この記事において、上記はすべて弁護士基準をあてはめています)。交通事故で傷害や死亡などの被害に遭われた方は、よければぜひ無料相談をご利用ください。

11章 慰謝料額に影響を与える過失割合について

事故に遭うと、被害者の受傷状況に応じて入通院慰謝料や後遺障害慰謝料など各種の慰謝料を請求できますが、慰謝料の金額は被害者の「過失割合」によっても影響を受けます。
被害者の過失割合を高くされると請求できる慰謝料額が大きく減額される可能性があるので、注意が必要です。

過失割合とは、事故の結果に対する被害者と加害者の責任割合をいいます。被害者の過失割合と加害者の過失割合を合計すると「1(100%)」となります。
たとえば追突事故の場合には基本的に被害者の過失割合が0%となりますが、被害者が急ブレーキをかけたり不適切なハンドブレーキ操作をしたりすると、20~30%程度の過失割合が認められる可能性もあります。

被害者に過失割合がある場合、被害者が加害者へ請求できる賠償金の金額が割合的に減額されます。たとえば1000万円の慰謝料が発生していても、被害者に2割の過失割合があれば相手に請求できる金額は800万円に減額されてしまうのです。

適切な金額の慰謝料を払ってもらうには、過失割合を正しく認定してもらわねばなりません。保険会社が提示する過失割合は必ずしも法的に適正ではないので、そのまま受け入れると不利益を受けるリスクが発生します。

正しい過失割合を知りたい場合には、弁護士に相談してみてください。事故の状況をお伝えいただけましたら、過去の裁判例も参考にして妥当と考えられる過失割合を提示いたします。ご自身で保険会社と交渉すると適正な過失割合をあてはめてもらいにくい場合、弁護士が示談交渉を代行して過失割合を訂正させられる可能性もあります。

過失割合について不満や疑問をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。

12章 弁護士に示談交渉を依頼するメリット

なるべく高額な慰謝料を払ってもらうには、弁護士に依頼するのが得策です。
以下では交通事故で弁護士に依頼するメリットをお伝えします。

弁護士基準が適用されて慰謝料額が上がる

弁護士に示談交渉を依頼すると、任意保険基準よりも高額な弁護士基準で慰謝料やその他の賠償金を計算します。
被害者が自分で交渉すると低額な任意保険基準が適用されてしまいますが、弁護士に任せると高額な弁護士基準が適用されるので、それだけで慰謝料額が大幅にアップする例が多数です。たとえば後遺障害慰謝料は2~3倍程度に上がり、入通院慰謝料は1.5~1.8倍程度へ増額、死亡慰謝料も1000万円程度上がるケースが少なくありません。自分で対応すると、損をしてしまうともいえるでしょう。適正な慰謝料を受け取るために弁護士へ依頼するのが得策です。

過失割合が適正になる

交通事故で慰謝料の不当な減額を防ぐには、過失割合を適正に算定しなければなりません。
しかし被害者が1人で示談交渉に対応する場合、自分では適正な過失割合の基準がわからない方も多いでしょう。素人の方の場合、基本の過失割合は理解しても正しく修正要素まで適用できる方は少数です。
弁護士が対応すると、法的な基準に照らして事案に応じた正しい過失割合を適用できます。
保険会社と示談をしても相手が納得しない場合、訴訟を起こして裁判所に正しい過失割合を認定してもらうことも可能です。

適切な過失割合をあてはめて慰謝料を確保するためにも弁護士によるサポートが必要といえるでしょう。

後遺障害認定を受けやすくなる

後遺症が残っても、後遺障害等級認定を受けられなければ基本的に後遺障害慰謝料や逸失利益を払ってもらえません。被害者がお一人で対応すると、どうしてもうまく後遺障害の内容や程度を立証できず、非該当となったり等級を下げられたりする可能性があります。

弁護士に依頼すれば、必要な検査についてアドバイスをしたり医師とコミュニケーションをとって後遺障害診断書の作成方法を伝えたりして、より効果的に後遺障害等級認定の手続きを進めやすくなるものです。

後遺障害認定を受けて高額な後遺障害慰謝料を払ってもらうためにも、弁護士までご依頼下さい。

ストレスがかからない

交通事故の示談交渉は、被害者にとって大きなストレス要因となります。
不眠になったり抑うつ状態の症状が出てしまったりする方も少なくありません。
弁護士に任せてしまえば自分では相手と話をする必要がありません。ふだんは交通事故について忘れて生活できるので、ストレスが大きく軽減されます。
今保険会社との示談交渉が大きな苦痛や重しとなっている方がおられたら、一刻も早く弁護士までご相談ください。

労力と時間を節約できる

交通事故の示談交渉に取り組むには、大変な労力と時間がかかります。慰謝料を始めとする賠償金の計算基準も調べなければなりませんし、相手への返答内容や相手からの提案内容についても検討しなければならないでしょう。
弁護士に依頼すれば、自分で対応しなくて良いので労力と時間を大きく節約できます。
生活や仕事など、しなければならないことに貴重な力と時間を振り向けられるのも大きなメリットとなります。

示談が決裂しても安心

示談が決裂すると、調停やADR、訴訟などのステップに進まねばなりません。
被害者が自分で対応している場合、こういった手続きを躊躇して、納得できなくても無理に示談してしまうケースがよくあります。しかしそれでは納得できる解決は難しくなるでしょう。
弁護士に示談交渉を任せていれば、決裂した後の訴訟を恐れる必要はありません。
相手の言い分が不合理な場合、無理に妥協せずに訴訟を起こして適正な慰謝料や賠償金を獲得できるメリットがあります。

13章 弁護士費用特約を利用して弁護士費用を抑えよう

「弁護士に依頼すると費用がかかる」と思って相談を躊躇してしまう方もおられます。
そんなときでも「弁護士費用特約」を適用すれば、被害者の負担額が大きく減額されたり無料になったりするので、思ったほどの負担にはなりません。

弁護士費用特約を使うと、保険会社が300万円までの弁護士費用を払ってくれますし、法律相談料は10万円まで負担してくれます。たいていの事故の場合、被害者は弁護士費用を払う必要がなくなります。

弁護士費用特約がついている保険の例

弁護士費用特約は、以下のような保険についているケースが多いので、事故に遭ったら必ずチェックしてみて下さい。

  • 自動車保険(自分が契約者になっているものだけではなく家族の保険の特約も使えるケースがあります)
  • 医療保険
  • 生命保険
  • 火災保険
  • クレジットカード(カード会社によって補償内容に違いがあります)

被害者に過失があっても弁護士費用特約を使える

ときどき「被害者に過失があると弁護士費用特約を使えない」と思い込んでいる方がいますが、そのようなことはありません。よほどの重過失や故意のケースでない限り、弁護士費用特約は適用できます。
また弁護士費用特約を使っても、保険等級はダウンしません。翌年度からの保険料にも影響しないので、安心して利用しましょう。

14章 まとめ

横浜クレヨン法律事務所では、交通事故被害者さまへのサポートに極めて積極的に取り組んでいます。当事務所の弁護士が示談交渉に対応した結果、慰謝料額が大幅にアップした事例も少なくありません。

お1人で示談してしまうと、本来得られるはずの慰謝料を払ってもらえないリスクが高まります。保険会社から示談案が送られてきたときにも、署名押印してしまう前に、一度弁護士までご相談ください。