交通事故で過失割合が10対0の場合、「過失相殺」されないので相手から高額な示談金を払ってもらえる可能性があります。
ただし被害者がケガをしたかどうかなどの事情によっても示談金の相場は異なります。
示談交渉時に損をしないよう、事故の賠償金の相場を把握しておきましょう。
この記事では10対0の交通事故の示談金相場を解説します。
事故に遭って保険会社と示談交渉中の方はぜひ参考にしてみてください。
1.示談金の相場はケガありとケガなしで異なる
交通事故に遭ったら、保険会社と交渉して損害賠償金の額を決めなければなりません。
このとき保険会社から支払われる損害賠償金が示談金です。
示談金には相場がありますが、事故の示談金の相場は「ケガあり」と「ケガなし」で大きく異なります。
ケガありの交通事故を「人身事故」といいますが、人身事故の場合、ケガなしの場合の「物損事故」より示談金額が高額になります。
人身事故の場合と物損事故の場合では、相手に請求できる賠償金の種類が大きく異なるからです(人身事故の場合の方が多種の賠償金を請求できます)。
1-1.ケガあり(人身事故)の場合に請求できる賠償金
ケガありの場合には以下のような賠償金を請求できます。
物的損害
以下のような物的損害が発生していたら賠償金を請求できます。
- 車の修理費用
- 車の買い替え費用
- 車の買い替えにかかる諸費用
- 代車費用
- 評価損害
- 営業損失
- 荷物の損害
人身損害
ケガをすると、以下のような人身損害についても相手に賠償を請求できます。
- 治療費
- 交通費
- 付き添い看護費
- 入院雑費
- 介護費用
- 器具や装具の費用
- 休業損害
- 逸失利益
- 慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)
1-2.ケガなしの場合に請求できる賠償金
ケガなしの場合には、上記のうち「物的損害」のみを請求できます。
慰謝料や逸失利益などを請求できないので示談金の相場は低くなります。
2.交通事故で過失割合が10対0になるケースとは
交通事故で過失割合が10対0になるのはどういったケースなのか、具体例をみてみましょう。
2-1.追突事故
追突事故では、多くのケースで追突した車の過失割合が10、追突された車の過失割合が0になります。
後続車は十分な車間距離をとっていなかった上前方不注視によって前の車に追突したといえるからです。
ただし前の車が急ブレーキを踏んだり不適切なハンドブレーキ操作をしたりした場合には前方車にも一定の過失割合が認められます。
駐車場や路肩に停めていて追突された
駐車場や路肩などに停車中に後続車から追突された場合にも追突車の過失割合が10、追突された車の過失割合が0になります。
ただし高速道路上で追突事故が発生した場合には、過失割合が追突した車の過失割合が60、追突された車の過失割合は40になります。
高速道路上では原則として停車が禁止されているからです。
信号待ちで停車していて後続車に追突された
信号待ちのために停車していたところ後続車に追突された場合、後続車の過失割合が10、追突された車の過失割合が0となります。
前方車両は道路交通法を守って停車していただけであり、過失は認められません。
2-2.センターラインを超えてきて事故が起こった
一方の車両がセンターラインを超えて走行してくると、非常に危険です。
車線を守っている車には過失がなくセンターラインを超えた車に全面的な過失があるので、過失割合は10対0になります(センターラインを超えた車の過失割合が10)。
2-3.信号無視
交差点で一方の車が信号無視をして相手の車が信号を守っていた場合、信号無視をした車の過失割合が10となって信号を守っていた車の過失割合が0になります。
たとえば直進車同士の出会い頭の交通事故で、一方が赤信号で突っ込んできて他方車両は青信号だった場合などです。
2-4.車と歩行者の交通事故
車と歩行者の交通事故の場合、歩行者は立場が弱いので過失割合が下がります。
場合によっては歩行者の過失割合が0になるので、以下でどういったケースかみていきましょう。
歩行者が青信号で通行中に車が接触
交差点で歩行者が青信号で歩いているところに車が赤信号で信号無視をして衝突すると、車の過失割合が10、歩行者の過失割合は0になります。
横断歩道上で歩行者に接触
信号機のない場所であっても、横断歩道上の歩行者は絶対的に保護されます。
歩行者が横断歩道を渡っているところに車が突っ込んできて接触した場合、車の過失割合が10、歩行者の過失割合は0になります。
参考:法令(道路交通法第38条の2)横断歩道のない交差点における歩行者の優先
車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。
2-5.自転車の交通事故
自転車が当事者となる交通事故でも過失割合が10対0になるケースがあります。
自転車が青信号で通行中に車が接触
交差点で自転車が青信号で走行しているのに車が赤信号で自転車に接触した場合には、車の過失割合が10、自転車の過失割合が0になります。
2-6.自転車と歩行者のケース
自転車と歩行者の交通事故であっても、自転車側が信号無視をして歩行者をはねてしまったら自転車側の過失割合が10、歩行者の過失割合が0になります。
3.交通事故の賠償金の相場は「計算基準」で異なる
10対0の交通事故の場合、示談金の金額の相場はどのくらいなのでしょうか?
実は交通事故の賠償金相場は「計算基準」によって大きく異なります。
交通事故の慰謝料や休業損害などの賠償金にはいくつかの計算基準があり、どれを適用するかで数字が大きく変わってくるのです。
以下では交通事故で適用される3つの計算基準をみてみましょう。
3-1.自賠責基準
自賠責基準は自賠責保険が保険金を計算する際に適用する基準です。
3つの基準の中でもっとも低額です。
3-2.任意保険基準
任意保険基準は任意保険会社が保険金を計算する際に適用する基準です。
自賠責基準より多少高額になるケースが多くなっています。
金額的には3つの基準の中で中間値(自賠責基準より高額で弁護士基準より低額)になるのが一般的です。
3-3.弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準は弁護士や裁判所が利用する基準です。法的な根拠があり、被害者にはもともと弁護士基準で賠償金を請求する権利が認められます。
弁護士基準の金額は3つの基準の中でもっとも高額です。
以下では人身事故で発生する「慰謝料」や休業損害をもとに、3つの基準を比較してみましょう。被害者が事故でケガをした場合の慰謝料には入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。
入通院慰謝料とは
入通院慰謝料とは、事故でケガをした人がケガによって受けた精神的苦痛を賠償してもらうための慰謝料です。入通院した期間に応じて計算されるので入通院慰謝料といいます。
後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とは、事故でケガをした人が治療を受けても完治せずに後遺症が残った場合の慰謝料です。後遺障害の内容や程度、認定される等級によって金額が異なります。
休業損害とは
休業損害は、仕事をしている人が交通事故に遭い、働けない期間が発生したときに請求できる賠償金です。会社員やアルバイトなどの給与所得者、自分で営業をしている自営業者やフリーランス、主婦などの家事労働者が休業損害を請求できます。
3-4.入通院慰謝料の相場
入通院慰謝料の相場を3つの基準で計算するとどうなるのか、みてみましょう。
自賠責基準の場合
自賠責基準の場合、入通院慰謝料の計算方法は以下の通りです。
- 4300円×治療日数
治療日数としては、以下のいずれか低い方の金額を採用します。
- 治療期間に対応する日数
- 実通院日数×2
つまり自賠責保険の場合、通院日数が少ないと慰謝料が減額されてしまう可能性があります。
自賠責基準の計算具体例
実際に自賠責基準で賠償金を計算するといくらになるのか、具体例を示します。
- 通院3か月(90日)、実通院日数60日のケース
通院3か月(90日)、実通院日数が60日の場合には通院期間である90日をもとに慰謝料を計算します。
よって入通院慰謝料は4300円×90日=387000円となります。
- 通院3か月、実通院日数40日のケース
通院3か月でも実通院日数が40日しかなかったら、実通院日数である40×2=80日を基準に慰謝料を計算します。
よって入通院慰謝料は4300円×80=344000円となります。
任意保険基準の場合
任意保険基準は書く任意保険会社がそれぞれ定めており、対外的に公表されていません。
よって一律の基準を示すことはできません。
ただ通院ベースで自賠責基準と同等か少し高い程度に設定されているケースが多数です。
入院すると通院だけのケースよりも慰謝料の額が上がる保険会社が多くなっています。
弁護士基準の場合
弁護士基準の場合、入院期間と通院期間の長さによって慰謝料額が変わります。
入通院期間が長くなると慰謝料額は上がります。また入院期間には通院期間より高額な慰謝料が認められます。
さらに弁護士基準の場合、「通常程度のケガ」か「軽傷、むちうちで自覚症状しかないケガ」かによって慰謝料の計算方法が分けられています。
「軽傷」とは打撲や擦り傷等の場合です。「むちうちで自覚症状しかない場合」とはむちうちになって「痛い、しびれる」など患者の訴える症状しかない場合をいいます。
むちうちの場合でもMRIやレントゲンなどで異常がみられれば「通常程度のケガ」として高額な慰謝料が認められます。一方、画像による多他覚所見がなければ慰謝料額は低額になります。
以下で入通院慰謝料のそれぞれのパターンについて、表を示します。
軽傷または自覚症状しかないむちうちの慰謝料
【表の読み方】
上記の表のうち、縦列は通院期間、横列は入院期間です。
通院した期間については縦列の期間で算定し、入院した期間があれば横列で算定します(入院しなかった場合、横列は無視します)。
縦列と横列がぶつかる場所が相場の慰謝料の金額です。
通常程度のケガの場合の慰謝料
表の読み方については、軽傷や自覚症状しかないむちうちのケースと同様です。
弁護士基準の計算具体例
弁護士基準で入通院慰謝料を計算するとどの程度の慰謝料となるのか、相場を計算してみましょう。
- 追突事故で3か月通院した場合(自覚症状しかないむちうち)
追突事故で自覚症状しかないむちうちとなり、3か月通院した場合の入通院慰謝料は53万円です。
- 追突事故で骨折、1か月入院、3か月通院した場合
追突事故で骨折し、1か月入院、3か月通院した場合、入通院慰謝料の相場は115万円になります。
弁護士基準の場合の注意点
弁護士基準の場合でも、あまりに通院日数が少なくなると慰謝料額が減額されます。
たとえば通院日数が長びいたケースで積極的な治療が行われていない場合、通院日数については「実通院日数×3」で計算される可能性があります(軽傷や自覚症状しかないむちうちの場合)。通常程度のケガの場合には「実通院日数×3.5」として計算されます。
3-5.後遺障害慰謝料の場合
後遺障害慰謝料は、認定された等級によって金額が変わります。
等級とは、後遺障害の内容や程度に応じて後遺障害につけられるランクのような制度です。
1から14までの等級があり、1級がもっとも高く14級がもっとも高くなっています。
当然、等級が高くなると慰謝料額も上がります。
任意保険基準は各保険会社によって異なるので基準を示せませんが、自賠責基準の場合は等級ごとに慰謝料の金額が一律です。弁護士基準の場合にも等級ごとの相場があるので示せます。
以下で各等級における自賠責基準と弁護士基準の後遺障害の慰謝料の表をみてみましょう。
【表の読み方】
1級から14級までの各等級における後遺障害慰謝料の表です。弁護士基準と自賠責基準と一覧で比較できます。
自賠責基準の場合、1級と2級で「要介護(介護を必要とする)」場合には慰謝料額が上がります。弁護士基準の場合、要介護かどうかで慰謝料の相場は変わりません。
参考までに任意保険基準の場合、上記の自賠責基準よりも多少高い程度の金額になるケースが多数です。
3-6.休業損害の場合
休業損害も計算基準によって金額が異なります。
自賠責基準の場合
自賠責基準の場合の休業損害は以下のとおりです。
- 1日あたり6100円×休業日数
自賠責基準の場合、1日あたりの基礎収入は6100円とします。ただし実際の収入を証明できる会社員などの場合には実収入を基準に算定します。その場合でも上限は1日あたり19000円です。
6100円が適用されるのは、収入額を証明できない主婦の場合などです。
任意保険基準の場合
任意保険基準は各任意保険会社によって異なりますが、自賠責基準をほぼ踏襲するケースが多くみられます。
弁護士基準の場合
弁護士基準の場合の休業損害は以下のとおりです。
- 1日あたりの基礎収入×休業日数
弁護士基準の場合、1日あたりの基礎収入は実収入をもとにして計算します。自賠責基準と違って限度額もありません。
主婦などの実際の収入がない場合には賃金センサスを参照して金額を定めます。たとえば主婦や主夫の場合には「全年齢の女性の平均賃金」をもとに計算するので、1日あたりだいたい1万円程度になります。
休業損害も弁護士基準を適用すると自賠責基準や任意保険基準より増額されるケースがよくあります。
4.交通事故の示談金計算方法
交通事故の示談金の相場を知るためには、計算方法を知らなければなりません。
以下で示談金の計算手順を示します。
4-1.それぞれの項目の損害額を計算する
まずはそれぞれの損害項目について、損害額を明らかにしましょう。
交通事故で請求できる賠償金は慰謝料だけではありません。治療費や休業損害、逸失利益や物損なども請求できます。
まずはこういった個別項目において慰謝料がどの程度発生するか、それぞれ計算する必要があります。損害項目を漏らすと相手に請求できる賠償金額が減ってしまうので、漏れのないように確実に計算することが重要です。
4-2.損害額を合算する
次に個別の損害額を合算します。こうして算出された金額が「その交通事故で発生した損害の全額」となります。
4-3.過失相殺を適用する
被害者に過失がある場合には、過失相殺を適用して賠償金額を減額します。たとえば被害者の過失割合が2割なら賠償金額は2割減となります。
過失割合が10対0の場合、過失相殺はしないので相手へ全額の賠償金を請求できます。
4-4.損益相殺を適用する
交通事故に起因して受け取っているお金があれば、差し引きしなければなりません。これを損益相殺といいます。
たとえば以下のような項目が損益相殺の対象です。
- 自賠責保険から受け取ったお金
- 健康保険や労災保険から受け取ったお金
- 人身傷害補償保険から受け取ったお金
4-5.交通事故の示談金計算方法の具体例
過失割合10対0の交通事故の示談金計算方法について、具体例でみてみましょう。
むちうちで6か月通院、休業日数30日、後遺障害14級の会社員のケース
- 治療関係費…30万円
- 休業損害…45万円
- 後遺障害慰謝料…110万円
- 逸失利益…125万円
この方の場合、損害の合計額は310万円です。
治療費を保険会社から直接払いしてもらっていた場合、30万円を差し引いて実際に受け取れる金額は280万円となります。
5.10対0の交通事故の示談金相場
過失割合が10対0の交通事故で、示談金の相場はどのくらいになるのでしょうか?
事故の示談金は、ケガの程度によって大きく異なります。同じ態様の事故でも大ケガをすれば示談金は高額になりますし、ケガが小さければ示談金は低額になります。
5-1.軽症の場合の相場
たとえば軽傷で1か月通院した程度であれば、受け取れる示談金は10~30万円程度が相場となるでしょう。
5-2.むちうちで後遺障害なし
むちうちで3か月通院した場合、受け取れる示談金額は数十万~100万円程度が相場となります。
5-3.むちうちで後遺障害あり
むちうちで6か月以上通院して後遺障害が残った場合には、受け取れる示談金は数百万円単位となるケースが多数です。
適正な示談金を受け取るためには、各パターンにおけるだいたいの示談金額の相場を押さえておくことが大切です。
自分では計算が難しい場合には弁護士へ相談しましょう。
6.ケガなしの場合の10対0の事故の示談金相場
ケガなしの事案で請求できる賠償金は物的損害のみです。
物的損害として相手に請求できるのは以下のような費用です。
車の修理費または時価額
交通事故で車が壊れた場合、修理費用を相手に請求できます。
ただし修理費用が車の時価を上回る場合、時価が限度となります。
車の買い替え費用
車が全損状態となって修理が不可能な場合、車の買い替え費用を請求できます。
ただしこの場合にも事故当時の車の時価が上限となります。
買い替え諸費用
車を買い換える場合、買い換えにかかる諸費用を請求できます。
買い替え諸費用として認められるのは、以下のような費用です。
- 買い替え車両の消費税
- 買い替え車両の自動車取得税
- リサイクル預託金
- 検査登録にかかる法定費用
- 車庫証にかかる明法定費用
- ディーラー報酬
- 自動車重量税の未経過分(事故車両の分)
- 廃車費用(事故車両の分)
- 残存車検費用(事故車両の分)
代車費用、公共交通機関の費用、タクシー代など
車を修理する間や買い換える間には、代車を利用しなければならないケースもあります。
その場合にはレンタカー代を基準として代車費用が認められます。
車がないので公共交通機関を利用した場合やタクシーを利用した場合、これらにかかる費用を請求できます。
レッカー費用
事故に遭ったときに車を修理工場まで運ぶためにかかったレッカー費用を請求できます。
持ち物や自転車などの修理費、弁償金
事故当時に所持していたスマホや時計、身につけていた衣服などが破損したらそれらについての弁償金を請求できます。
自転車が壊れた場合には自転車の修理費用や時価相当額を払ってもらえます。
6-2.物損事故の示談金相場
ケガのない場合の交通事故で請求できる賠償金の主な部分は車の修理費です。ただし事故当時の車の時価額が限度となります。
多くの場合には10万~数十万円程度となるでしょう。50万円を超えるケースは多くはありません。
ただし高級外車が壊れた場合などには数百万円単位の賠償金を請求できるケースもあります。
物損事故の場合でも具体的にどの程度の賠償金を請求できるかはケースバイケースです。示談の際に損をしないためには、自分のケースでどの程度請求できるのかを把握しておくべきといえるでしょう。
わからない場合には弁護士までご相談ください。
7.過失割合が10対0になる場合の注意点
過失割合が10対0になる場合、過失相殺されないので受け取れる示談金は高額になる可能性が高くなります。しかし過失割合10対0ならではの注意点があるので、把握しておきましょう。
問題は、過失割合10対0の場合には自分の保険会社が示談交渉に対応してくれないことです。
一般的な交通事故で被害者にも過失がある場合、被害者が加入している保険会社の担当者が示談交渉を代行してくれます。よって被害者が自分で示談交渉する必要がありません。
ところが被害者の過失が0の場合、対人賠償責任保険や対物賠償責任保険が適用されないので、被害者が自分ひとりで示談交渉しなければならないのです。
交渉相手は示談に長けた損害保険会社の担当者なので、被害者がひとりで対応すると極めて不利になってしまうリスクが高まります。
過失割合10対0の事故の被害者が権利を守るためには、示談交渉を弁護士に依頼すべきです。弁護士が示談交渉を担当すれば、被害者は自分で話し合いを進める必要がありません。相手が保険会社の担当者であっても不利になることはなく、むしろ有利に話を進められる可能性も高くなるでしょう。
また弁護士が示談交渉を担当すると、高額な弁護士基準が適用されるので賠償金額が全体としてアップします。
自分で対応しなくて良いので、ストレスもかかりません。
過失割合が10対0で被害者が自分ひとりで示談に対応しなければならない状況になったら、早めに交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士へ相談しましょう。
弁護士費用特約を利用する
過失割合が10対0の交通事故で被害者が弁護士に依頼するときには、弁護士費用特約を利用するようおすすめします。
弁護士費用特約とは、損害保険会社が弁護士費用を負担してくれる特約です。
弁護士費用特約を使えば、限度額までは被害者が自分で弁護士費用を負担する必要がありません。弁護士費用を気にせずに交通事故対応を弁護士に依頼できるので、依頼のハードルが低くなるでしょう。
現在、多くの自動車保険には弁護士費用特約がついています。過失割合10対0の交通事故に遭って困ったときには自分の自動車保険に弁護士費用特約がついていないか確認してみてください。
8.過失割合が10対0のときに正当な示談金を受け取るためのポイント
過失割合が10対0の交通事故で、被害者が正当な示談金を受け取るためには以下のようなことに注意しましょう。
8-1.人身事故として届け出る
交通事故には「人身事故」と「物損事故」の2種類があります。
事故が発生して警察に届け出るときには、どちらかを選ばねばなりません。
事故で外傷が発生し、みるからに人身事故であれば誰でも人身事故として届け出るでしょう。しかし過失割合が10対0の追突事故では被害者に目立った外傷が認められないケースも多々あります。そんなときには、現場で物損事故として届出をしてしまうケースが少なくありません。
目立つ外傷がなくても、むちうちなどのケガをする事例は多々あります。追突事故に遭ったら、できるだけ人身事故として届け出る方が良いでしょう。
もしも現場では物損事故として届け出てしまい、後に傷みが発生してきたらすぐに病院へ行き、診断書を取りましょう。そのうえで警察へ行き、物損事故から人身事故へ切り替えてもらうべきです。
8-2.目立った外傷がなくても病院へいく
過失割合が10対0の追突事故では、被害者に目立った外傷がないのであえて病院に行かない方もおられます。
しかし事故に遭ったら必ず病院へ行くよう強くおすすめします。
被害者自身が自覚していなくても、実はケガをしているケースが多いからです。
たとえばむちうちの場合、事故の数日後に痛みが出てくるケースがよくあります。
脳障害が起こった場合などにも被害者には自覚がない場合が少なくありません。
放っておくと重大な結果につながる可能性があるので、事故に遭ったらできるだけすぐに病院へ行きましょう。
8-3.計算漏れがないようにする
交通事故できちんと賠償金を受け取るには、損害の費目について計算漏れがないように注意しなければなりません。
たとえば治療費、交通費、付き添い看護費、休業損害、逸失利益などの賠償金を請求できる可能性がありますが、損害の費目を抜かすとその分は払ってもらえなくなってしまいます。
保険会社が提示した示談案が完全とは限りません。損害の費目に漏れが生じているケースも珍しくないので、示談してしまう前に弁護士へ相談しましょう。
弁護士に保険会社から届いた示談案をみてもらったら、内容が適切かどうか判定してもらえます。
8-4.弁護士基準で計算する
交通事故で被害者が適正な相場の賠償金を受け取るには、弁護士基準で賠償金を計算すべきです。
弁護士基準は法的な基準であり、被害者はそもそも弁護士基準で計算された賠償金を受け取る権利を持っているからです。
また実際にも、弁護士基準で賠償金を計算すると他の基準より大幅に受け取れる示談金額が上がります。
弁護士基準で賠償金を計算するには、弁護士に示談交渉を依頼しなければなりません。
被害者が自分で示談交渉をすると、保険会社は低額な保険会社の基準でしか計算しないのが実情です。
より適正な弁護士基準で賠償金を計算するため、事故に遭ったら早めに弁護士へ依頼しましょう。
8-5.治療は症状固定または完治まで継続する
交通事故後の治療期間にも注意が必要です。
治療は基本的に「症状固定」または「完治」まで継続しなければなりません。
症状固定とは、それ以上治療を継続しても症状が改善しなくなった状態です。症状固定したときに後遺症が残っていたら、後遺障害等級認定を申請します。
完治とは、症状が完全に治ってもとに戻った状態をいいます。完治した場合には後遺症は残りません。
入通院慰謝料や休業損害は治療期間に応じて払われるので、早期に治療を打ち切ると賠償金が減額されてしまいます。
通院途中で保険会社が治療費を打ち切ってくるケースもよくありますが、保険会社が治療費を払わなくても治療をやめるべきではありません。
医師と相談して、症状固定または完治していないなら健康保険を適用して通院を継続しましょう。
8-6.忙しくても通院を継続する
事故後の通院頻度にも注意が必要です。
自賠責基準ではもちろんのこと、弁護士基準であっても通院頻度が低くなると入通院慰謝料を減額される可能性があります。事故後、忙しいからといってあまり通院しない方がいますが、そのような対応をとると不利益を受けてしまうでしょう。通院はできるだけ一定以上の頻度で行うようおすすめします。
ただ不要な通院をすべきと言っているのではありません。症状が続いている限り、できるだけ頻繁に病院へ通ってしっかり治療を受けるべき、という意味です。
9.弁護士に相談すべきタイミング
過失割合が10対0の交通事故に遭ったら弁護士に相談すべきですが「いつのタイミングで相談すればよいのか?と迷ってしまう方も多数おられます。
結論的に、弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど安心です。事故直後でもかまいません。対応が遅くなると被害者がとった言動によって不利益が積み重なり、後から取り戻しができなくなる可能性もあります。
一般的な弁護士費用の計算方法の場合(着手金成功報酬方式)、早めに弁護士に依頼したからといって弁護士費用が高額になるわけでもありません。
事故に遭ったらすぐにでも弁護士相談しましょう。
迷っているなら、以下のような場合にはすぐに弁護士へ相談するようおすすめします。
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横浜クレヨン法律事務所は交通事故案件に力を入れて取り組んでおり、過失割合が10対0の案件も多数解決してきた実績があります。
横浜で追突事故などに遭い、被害者となった場合には、お気軽にご相談ください。