交通事故で後遺障害が残ったり被害者が死亡したりすると、相手へ「逸失利益」を請求できる可能性があります。
逸失利益とは事故によって失われた利益、すなわち「得られなくなった収入」です。
逸失利益の金額は数千万円~1億円を超えるケースもあり、高額です。重大な事故に遭った被害者が救済されるために非常に重要な補償といえるでしょう。
この記事では逸失利益がもらえる人、逸失利益の計算方法などを弁護士がわかりやすくお伝えします。事故に遭われて後遺障害が残った場合などにはぜひ参考にしてみてください。
1.逸失利益とは
逸失利益とは、交通事故によって「失われた利益」です。
交通事故で後遺障害認定を受けた方や死亡した場合に逸失利益が払われます。
1-1.後遺障害が残った場合
交通事故で後遺障害が残ると、それまでと同じようには働けなくなります。生涯収入が減少すると考えられるので、その減収分を逸失利益として請求できます。
1-2.死亡した場合
交通事故で被害者が死亡すると、一切働けなくなって収入が0になります。そこで、その減収分を逸失利益として請求できるのです。
2.2種類の逸失利益
2-1.後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益は、後遺障害が残って等級認定を受けた方に払われる逸失利益です。
後遺障害の等級ごとに「労働能力喪失率」が定められており、その割合に従って逸失利益が計算されます。
同じ収入の場合、後遺障害逸失利益の金額は、後遺障害の等級が上がるほど高額になります。
2-2.死亡逸失利益
死亡逸失利益は、被害者が死亡した場合に払われる逸失利益です。
事故前の被害者の収入が高額だった場合に死亡逸失利益は高額になります。
3.逸失利益をもらえる人
交通事故に遭ったからといって、全員が逸失利益を払ってもらえるわけではありません。逸失利益が払わられるのはどういった被害者なのか、みてみましょう。
3-1.事故前に仕事をしていた人
交通事故で逸失利益を払ってもらえるのは、基本的に事故前に仕事をして収入を得ていた人です。
逸失利益が払われる根拠は「事故によって収入が減少したこと(なくなったこと)」だからです。そもそも事故前に働いていなかった人には減収が認められないので逸失利益も認められません。ただし、働く能力があった、意欲があった、学生だった、家事をしていたといった場合は個別の判断になります。
以上をもとに、個別の職業別の逸失利益についてみていきましょう。
3-2.後遺障害逸失利益の場合
後遺障害逸失利益が認められるのは、以下のような人です。
会社員
会社員の場合、交通事故に遭って労働能力が減少するとそれまでと同じようには収入を得られなくなると考えられます。よって逸失利益を請求できます。
自営業者
自営業者の場合も交通事故に遭って労働能力が減少するとそれまでと同じようには働けなくなって収入が減少すると考えられます。よって逸失利益を請求できます。
アルバイトやパートなどの非正規労働者
アルバイトやパートなどの非正規労働者も後遺障害が残って仕事をしにくくなる以上、逸失利益が認められます。
役員
会社役員の場合、報酬の全額について逸失利益性が認められるわけではありません。
報酬の全額が労働の対価ではないからです。事故後、労働ができなくなっても報酬額が変わらないケースもあります。
役員の報酬には労働対価部分と利益配当部分があると考えられます。よって労働対価部分については逸失利益が認められますが、利益配当部分については逸失利益が認められません。
主婦や主夫
主婦や主夫などの家事労働者も逸失利益を請求できます。
家事労働には経済的な対価があると考えられるからです。
子ども
子どもは現実に収入を得ていませんが、逸失利益を請求できます。事故に遭わなければ将来就職して収入を得たはずであるところ、交通事故で後遺障害が残ったせいで働けなくなって収入が減少すると考えられるからです。
学生
学生の場合にも逸失利益が認められます。アルバイトをしていればアルバイト収入がありますし、就職が内定していたら内定先で給与をもらえるはずだからです。後遺障害が残ることによって期待していたほどには収入を得られなくなる可能性が高いので、逸失利益が払われます。
高齢者
逸失利益を計算するときには、基本的に「就労可能年齢」までの分を計算に入れられます。
就労可能年齢とは、仕事をできる年齢のことです。
人の就労可能年齢は通常67歳までとして計算されるので、68歳以上の高齢者の場合に逸失利益が認められるのかが問題になります。
高齢者であっても実際に働いていればその収入を基準にして逸失利益が認められます。失業中でも就職活動をしていた場合などには逸失利益が認められる可能性があります。
失業者
失業者は基本的に働いていないので逸失利益が認められないと考えられます。
ただし以下のような場合には、一時的に失業していても逸失利益が認められます。
- 労働への意欲がある
- 労働能力がある
- 実際に就職活動をしているなど就労の蓋然性があった
こういった条件を満たす場合には失業者であっても逸失利益を請求できると考えましょう。
3-3.死亡逸失利益の場合
死亡逸失利益が払われるのも「事故前に働いていた人」であり、基本的な考え方は後遺障害逸失利益の場合と同様です。
主婦や主夫、子どもや失業者などは実際に働いていないケースもありますが、逸失利益が認められます。
以下で死亡逸失利益が認められる人の一覧を示します。
- 会社員
- 自営業者
- アルバイトやパートの労働者
- 役員
- 主婦や主夫
- 子ども
- 高齢者
- 学生
- 失業者
- 年金生活者
4.逸失利益をもらえない人
交通事故に遭っても逸失利益をもらえないのは、以下のような人です。
4-1.無職の人
無職の人は、交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりしても減収が発生しません。よって逸失利益も請求できません。
たとえば就職活動をしていない失業者の方や生活保護の人などは逸失利益を払ってもらえないと考えましょう。
4-2.不労所得で生活している人
不動産収入や株式の配当収入など、不労所得で生活している人も逸失利益をもらえません。
不労所得は労働能力が低下したり本人が死亡したりしても払われ続けるものだからです。
後遺障害や死亡による損害が発生しないので逸失利益が発生しません。
4-3.年金生活者(後遺障害逸失利益)
年金生活者は後遺障害逸失利益を得請求できません。後遺障害が残っても年金が減らされることはないからです。
ただし老齢年金や障害年金を受給している人の場合、死亡逸失利益は払ってもらえます。
5.休業損害と逸失利益の違い
休業損害と逸失利益は非常によく似ています。混同されるケースが多いので、何が違うのか理解しておきましょう。
5-1.休業損害とは
休業損害とは、交通事故によって働けない日が発生したときに発生する減収への補償です。
逸失利益も交通事故によって働けなくなったときに支払われるので、両者はよく似ています。
発生時期の違い
休業損害と逸失利益の主な違いは、発生する時期です。
休業損害の場合、症状固定前に発生します。症状固定前に仕事を休んだ場合には、休んだ日数分の休業損害を請求できます。
一方逸失利益を計算するのは症状固定後です。症状固定後に後遺障害が残った場合に認定された後遺障害等級に応じて逸失利益を請求できます。
すでに発生したものか将来の減収かという違い
休業損害は「実際に発生した損害」を請求するものですが、逸失利益の場合には「将来にわたって発生し続ける減収」を請求するという違いもあります。
認められる人の違い
休業損害と逸失利益は、認められる人の範囲も異なります。
逸失利益の場合、子どもにも認められますが、子どもに休業損害は認められません。
子どもは現実に働いていない以上、休業によって損害が発生したとはいえないためです。
【休業損害と逸失利益の違い一覧表】
6.逸失利益と慰謝料の違い
交通事故で被害者が死亡したり後遺障害が残ったりすると、慰謝料も払われます。
慰謝料と逸失利益はまったく別のものなので、混同しないように注意しましょう。
慰謝料と逸失利益の違いは以下の通りです。
6-1.慰謝料は精神的損害に対する賠償金
慰謝料は被害者が受けた精神的損害に対する賠償金です。
事故で被害者に後遺障害が残ると、その人は大きな精神的苦痛を受けます。よって後遺障害慰謝料を請求できます。
同様に事故で被害者が死亡すると、その人は大きな精神的苦痛を受けて慰謝料が発生し、その慰謝料が遺族へ相続されると考えられています。よって死亡した被害者の遺族が死亡慰謝料を請求できるのです。
6-2.発生原因の違い
慰謝料と逸失利益の一番の違いは「発生原因」です。慰謝料は「被害者が受けた精神的苦痛」を和らげるためのものですが、逸失利益は「労働能力が減少した(なくなった)ことにたいする補償」です。被害者の精神的苦痛とは関係がありません。
よって慰謝料と逸失利益は本来的に全く別のものといえます。
6-3.金額の違い
慰謝料と逸失利益は、金額計算方法もまったく異なります。
慰謝料の場合、被害者の年齢や収入、職業などによって基本的に金額が変わりません。どのような年齢職業性別の人でも交通事故で受ける精神的損害は同じと考えられるからです。
一方逸失利益の場合、被害者の年齢や職業、収入によって大きく金額が変わってきます。事故の影響で発生する減収額は、被害者の年齢や職業、収入額等によって変わってくると考えられるからです。
6-4.休業損害も逸失利益も慰謝料も合計して請求できる
慰謝料も逸失利益も休業損害もすべて別個の損害です。
交通事故に遭ったときには慰謝料と逸失利益と休業損害をそれぞれ別途払ってもらえます。
事故の示談金計算の際に計算漏れを起こさないよう注意しましょう。
7.逸失利益の計算方法
次に逸失利益の計算方法をみてみましょう。
後遺障害逸失利益と死亡逸失利益で計算方法が異なるので、それぞれについてみていきます。
8.後遺障害逸失利益
8-1.後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益は、以下の計算式によって算定します。
後遺障害逸失利益=事故前の年収×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
8-2,事故前の年収について
後遺障害逸失利益を計算するときには、事故前の年収を明らかにしなければなりません。
会社員やアルバイトなどの場合
会社員やアルバイトの場合、実際の収入を基準にします。基本給だけではなくボーナスや手当なども含みます。給与所得の源泉徴収票をもとに計算するのが一般的です。
ただし30歳以下の若い人の場合、全年齢平均の賃金センサスを利用するケースが多数です。若い人の場合には賃金が低くなっていますが、将来はより高額な収入を得る可能性が高いためです。
自営業者の場合
自営業者の場合には、確定申告書の申告所得を基礎収入とするのが一般的です。
ただし実収入が申告所得額と異なる場合、実収入額を証明できれば実際の収入を基準にして計算してもらえます。
赤字の場合には、固定費などを基準に基礎収入を算定できる可能性があります。
また申告していない場合にも実際の収入を証明できれば逸失利益を請求できる可能性があります。
以上のように会社員やアルバイトなどの実際の収入のある人の場合、現実の収入額を基準にします。
一方主婦や子ども、失業者などの場合には実際の収入がないので現実の収入額を基準にできません。以下でどのようにして事故前の年収を算定するのか、みてみましょう。
主婦や主夫の場合
主婦や主夫などの家事労働者の場合には「全年齢の女性の平均賃金」を基準にします。
男性の主夫の場合にも「女性の平均賃金」をもとにするので、間違えないように注意しましょう。
主夫の場合に男性の平均賃金を基準にすると、女性の平均賃金より高額になって格差が生じ、不合理だからです。
兼業主婦の場合
パートなどで働きながら主婦をしている兼業主婦の方の場合には、実際の収入額と全年齢の女性の平均賃金を比較して、高額な方を採用します。
仕事と家事労働の両方をしているので合算したくなりそうですが、合算はできないので間違えないように注意しましょう。
高齢な主婦の場合
高齢な主婦の場合、全年齢の女性の平均賃金ではなく年齢別の女性の平均賃金が用いられるケースがあります。
一人暮らしの主婦の場合
夫に死に別れたなどの事情で一人暮らしをしている主婦の方には逸失利益が認められません。
そもそも逸失利益が認められる根拠は「労働」しているからです。他人のための家事労働には経済的対価があると考えられますが、自分のための家事労働には経済的対価が認められません。よって一人暮らしの主婦の場合には逸失利益や休業損害を請求できないと考えられています。
子どもの場合
子どもの場合には、大卒者の平均賃金を使って基礎収入を算定するケースが多数です。
近年では多くの方が大学へ進学するからです。
ただし男子の場合と女子の場合とで計算に格差が生じるので注意しましょう。
男子の場合には「男性の平均賃金」を用いますが、女子の場合には「男女の平均賃金」を使うからです。
男子の場合、男性の平均賃金を用いることに問題はありません。
一方女子の場合、女性の平均賃金を用いると男子の場合より大幅に逸失利益の金額が減らされてしまいます。そこで少しでも格差を埋めるために男女の平均賃金を用いるのです。
それでも男子の場合よりは逸失利益の金額が減ります。
こういった結論は不合理とも思えますが、現在の法律の限界といえるでしょう。
失業者の場合
失業者の場合には、ケースによって利用する基準が異なります。
前職の収入を基準にすることもあれば、平均賃金を使う場合もあります。
就職が内定していれば、内定先の給与体系を基準にする可能性もあります。
失業者が逸失利益を請求するとき、何が妥当かわからない場合には弁護士へ相談しましょう。
役員の場合
会社役員の場合には、報酬のうち労働対価部分と利益配当部分に分けて、労働対価部分のみを基礎収入とします。
- 労働対価部分…仕事をすることによって払われる報酬の部分
- 利益配当部分…仕事とは無関係に利益配当として払われる報酬の部分
実際にどの程度の割合が労働対価部分となるかは、ケースによって異なります。
たとえばひとり会社などで社長自身がほとんどの労働をしている場合などには、労働対価部分が100%に近くなってきます。
一方社長や役員自身はあまり働かずに人に任せている場合などには労働対価部分は小さくなり、逸失利益は少額になるでしょう。
役員の逸失利益を正確に計算するには専門知識が必要です。迷ったときには弁護士へ相談しましょう。
8-3,労働能力喪失率について
後遺障害逸失利益を計算する際には「労働能力喪失率」を明らかにしなければなりません。
労働能力喪失率とは、後遺障害によって失われた労働能力の割合です。
後遺障害が残ったからといって、一気に何の仕事もできなくなるわけではありません。
後遺障害の程度に応じて一定の仕事はできると考えられます。そこで認定された後遺障害の等級に応じて労働能力喪失率を算定し、計算の際に考慮します。
後遺障害の等級ごとの労働能力喪失率は以下の通りです。
【後遺障害等級ごと労働能力喪失率の表】
たとえばむちうちで後遺障害14級となった場合、労働能力喪失率は5%となります。
8-4.ライプニッツ係数について
後遺障害逸失利益を算定する際には「ライプニッツ係数」についても知っておかねばなりません。
ライプニッツ係数とは、将来にわたって受け取るはずのお金を示談時に一括して受け取ることによって発生する利益を控除するための係数です。
逸失利益は、将来受け取るはずだったのに受け取れなくなった収入です。
ただ将来の収入は、一気に受け取るのではなく本来は1か月や1年などの段階を追って受け取っていくはずものです。それを一気にまとめてもらってしまうと、被害者には「運用利益」が発生してしまうと考えられます。
そこでその利益を控除するために適用する係数がライプニッツ係数です。
ライプニッツ係数は就労可能年数に応じて変わるので、正しい数字を当てはめて計算する必要があります。
ライプニッツ係数についてはこちらの国土交通省のサイトで公表されているので、必要に応じて確認しましょう。
事故の時期によって異なるライプニッツ係数
ライプニッツ係数は交通事故の時期によって異なる可能性があります。
2020年4月、民法が改正されてライプニッツ係数の基準となる「法定利率」が変更されたためです。
2020年3月31日まで法定利率は年5%でした。よって2020年3月31日までの事故の場合、ライプニッツ係数も年率5%を基準に計算されます。
一方2020年4月1日からは法定利率が年3%になっています。よって2020年4月1日からの事故の場合、年率3%を基準としたライプニッツ係数を当てはめなければなりません。
上記でご紹介した国土交通省のサイトでは年率3%のライプニッツ係数が表記されています。
今後の法定利率について
2020年4月1日以降、法定利率は3年ごとに改定されます。
よって2023年4月からは法定利率が変更される可能性があります。そうなれば適用すべきライプニッツ係数の数字が今とは異なってくるので、間違えないように正しい数字を参照しましょう。
9.死亡逸失利益
次に死亡逸失利益の計算方法をみてみましょう。
9-1.死亡逸失利益の計算式
死亡逸失利益の計算式は以下の通りです。
死亡逸失利益=事故前の収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
事故前の収入について
事故前の収入については、基本的に後遺障害逸失利益の場合と考え方は同じです。
年金生活者の場合、年金所得を基準にします。
生活費控除率について
死亡逸失利益を計算する際には「生活費控除率」を考慮しなければなりません。
生活費控除率とは、生活費がかかる割合です。
被害者が死亡すると、生活費が一切かからなくなるので生活費を控除しなければならないのです。
被害者の性別や一家の中での立場により、生活費控除率は変わります。
- 被害者が一家の大黒柱だった場合
被扶養者が1名…40パーセント
被扶養者が2名以上…30パーセント
- 被害者が一家の大黒柱ではなかった場合
女性の場合…30パーセント
男性の場合…50パーセント
ライプニッツ係数について
被害者が死亡した場合にもライプニッツ係数をもとに計算しなければなりません。
死亡後に順に受け取っていくはずの将来の収入を当初に一括して受け取るためです。
9-2.高齢者の場合の逸失利益
高齢者の場合、就労可能年齢を計算するときに問題が生じます。
一般的な交通事故被害者の場合、就労可能年齢は67歳までと考えられています。ところが実際に67歳を超えても働いている人は存在するでしょう。
そこで高齢者についての就労可能年齢は「平均余命の2分の1の年数」として計算するものと考えられています。
10.逸失利益計算の具体例
逸失利益を計算すると、具体的にいくらになるのか計算例をみてみましょう。
10-1.後遺障害14級となった会社員(年収400万円、30歳)
会社員の方が交通事故でむちうちとなり、後遺障害14級が認定されたとしましょう。
むちうちの場合、労働能力喪失機関は5年程度に制限されるのが一般的です。
そこで後遺障害逸失利益は以下の金額となります。
400万円(事故前の年収)×0.05(労働能力喪失率)×4.5797(5年に対応するライプニッツ係数)=915940円
10-2.後遺障害12級となった自営業者(年収500万円、40歳)
自営業者の方が交通事故に遭い、神経障害で12級が認定された場合の後遺障害逸失利益をみてみましょう。
12級の場合には労働能力喪失期間が10年程度に制限されるのが一般的です。
500万円(事故前の年収)×0.14(労働能力喪失率)×8.5302(10年に対応するライプニッツ係数)=597万1140円
10-3.一家の大黒柱が死亡(年収600万円、妻と1人の子どもあり、35歳)
一家の大黒柱で妻とひとりの子どもがいる方が交通事故で死亡した場合、逸失利益は以下の通りです。
600万円(事故前の年収)×(1-30%)(生活費控除率)×20.389(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)=8653万3800円
11.減収がない場合の逸失利益
逸失利益は「事故によって発生した減収に対する補償」です。
減収が発生していない場合には逸失利益は発生しないのが原則となります。
ただし以下のような場合には、実際の減収がなくても逸失利益が認められる可能性があります。
11-1.将来の昇進、昇給、転職が難しくなった
交通事故の影響で将来の昇進や昇給、転職が難しくなると、事故前よりは収入が減っていないとしても実質的に不利益が及びます。そこでこういった事情がある場合には実際に減収がなくても逸失利益を請求できます。
11-2.本人の特別な努力によって減収を免れている
本来なら減収が発生しているはずのケースでも、本人が特別に努力することによって減収を免れることがあります。そういった場合には、本来収入が減っているはずなので逸失利益が認められます。
11-3.勤務先の配慮により収入が維持できている
本来なら減収が発生するはずでも、勤務先が配慮してくれて減収が発生しないケースがあります。そういった場合も本来は収入が減っているはずなので逸失利益が認められます。
12.逸失利益の計算や請求を弁護士に依頼するメリット
交通事故の逸失利益についてわからないことや不安な点、納得できないことがあったら弁護士へ相談しましょう。
以下で逸失利益の計算や示談交渉を弁護士に依頼するメリットをお伝えします。
12-1.難しい計算を正確にできる
逸失利益の計算は非常に複雑です。
被害者によって基礎収入も異なりますし、ライプニッツ係数も正しいものを当てはめなければなりません。自分で計算すると間違ってしまう方も多いでしょう。
弁護士に相談すれば、状況ごとに正しく逸失利益を計算できます。自分では計算が難しい場合でも正確に逸失利益を計算できるのはメリットといえるでしょう。
12-2.示談交渉を任せられる
弁護士に逸失利益の計算をお願いした場合、引き続いて相手保険会社との示談交渉を任せられます。自分で示談交渉をすると労力がかかって大変ですが、弁護士に依頼すれば手間が省けます。
特に重大な後遺障害が残った場合や死亡事故の場合、被害者やご遺族は普段の生活すら大変になりがちです。そういった場合に弁護士に全面的に示談交渉を任せられるのは大きなメリットとなるでしょう。
12-3.高額な逸失利益を請求できる可能性が高まる
逸失利益を請求しても、必ずしも保険会社がスムーズに対応してくれるとは限りません。
- 減収が発生していない
- 後遺障害が労働能力に影響していない
- そもそも収入がない(失業者や開業準備中の場合など)
こういった主張をされて逸失利益の支払いを否定されるケースもよくあります。
そんなとき、弁護士に依頼すれば適正な逸失利益を計算して保険会社と交渉してくれるので、保険会社に逸失利益を払わせられる可能性が高まります。保険会社が逸失利益を減額してきたときにも弁護士に依頼すれば適正な金額にしてもらえるケースが多数です。
自分で交渉するより高額な逸失利益を請求できる可能性が高まることも、弁護士に依頼するメリットといえるでしょう。
横浜クレヨン法律事務所では交通事故被害者救済に力を入れて取り組んでいます。これまで逸失利益に関するトラブルも多数解決してきました。
- 保険会社から逸失利益を払わないと言われた
- 逸失利益の計算方法に納得できない
- 減収が発生していない
- 保険会社が提示する賠償金額が妥当かわからない
- 逸失利益を計算してほしい
逸失利益についてお悩みを抱えておられるなら、状況が悪化する前にお早めにご相談ください。