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弁護士 鈴木 晶

一般の方々に、わかりやすく法律の知識をお届けしております。
難しい法律用語を、法律を知らない人でも分かるような記事の作成を心がけています。
交通事故に関する様々な悩みを持つ方々のために、当ホームページは有益な情報を提供いたします。

交通事故証明書は何に使うかご存知でしょうか?

交通事故に遭ったら「交通事故証明書」が必要な場面が多数あります。
たとえば保険会社から保険金を受け取る場合、自分の保険会社から保険金を受け取る場合などです。
いざというときに困らないために、交通事故証明書を何に使うのか、どうやって取り寄せれば良いのか、記載事項や見方などを正しく理解しておきましょう。
この記事では交通事故証明書がどのような書類で何に使うのか、入手方法や見方について弁護士が解説します。

交通事故に遭われた方はぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

  • 交通事故証明書はどんな時に使うのか
  • 交通事故証明書の入手方法や取得までの流れ
  • 交通事故証明書の記載事項、見方
  • 交通事故証明書を取得する場合の注意点
  • 交通事故証明書を入手できない場合の対処方法
  • 交通事故証明書の発行を受けられないリスク

目次

1.交通事故証明書とは

そもそも交通事故証明書とは何なのでしょうか?
交通事故証明書は、事故が発生したことを証明するための公的な書類です。「自動車安全運転センター」という警察庁所轄の機関が発行します。

交通事故証明書があれば、事故が発生したことを客観的に証明できます。
任意保険や自賠責保険、被害者が自分で加入している保険に保険金を請求する際などにも必要になる重要書類です。

被害者が事故についての正当な補償を受けるために必要な書類ともいえるでしょう。
交通事故に遭ったら交通事故証明書の記載内容や取得方法などを理解しておくべきです。

1-1.交通事故証明書が発行される条件

交通事故証明書を発行してもらうには、交通事故を警察へ届け出る必要があります。
事故にあっても警察へ届出をしなければ交通事故証明書が発行されず、後で困ってしまう可能性があります。また事故の警察への報告は事故当事者の法的な義務です(道路交通法72条1項後段)

【条文引用】

道路交通法72条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

事故に巻き込まれたら、相手が警察を呼ぶことに消極的でも必ずすぐに110版通報するなどして警察へ届け出ましょう。

1-2.人身事故でも物損事故でも交通事故証明書が発行される

交通事故証明書が発行されるのは、人身事故のケースだけではありません。
人が死傷しなかった物損事故のケースでも警察に届出をすると交通事故証明書が発行されるようになります。
道路交通法上、物損事故のケースでも警察への届出は必要です。

交通事故が人身事故として取り扱われるための対処方法

交通事故が人身事故として取り扱われるには、警察へ診断書を提出しなければなりません。
事故に遭ったらすぐに整形外科などの病院へ通い、医師に診断書を作成してもらって警察へ持参しましょう。
交通事故が人身事故であるにも関わらず物損事故扱いになると、加害者が基本的に処罰されません(物損事故では基本的に罰則が適用されず、相手が処罰されるのは当て逃げのケースなどで限定されます)。
また人身事故についての保険金請求手続きにも手間がかかってしまう可能性があります。

物損事故から人身事故への切り替えができる

事故直後は痛みなどを感じにくく、本当はケガをしていても物損事故として届け出てしまう方が少なくありません。そんなときには後からでも良いので、病院に行って診断書を医師に書いてもらい、早めに警察へ持参しましょう。そうすれば物損事故から人身事故へ切り替えられて、事故が人身事故扱いになります。

ただし物損事故から人身事故への切り替えには期限があります。
事故後10日程度を超えると警察では切り替えてもらえなく鳴る可能性が高くなってしまうので、切り替えを行いたい場合には早めに手続きしましょう。

交通事故証明書は何に使う?

交通事故証明書は何に使うのでしょうか?具体的な用途を確認しましょう。

  • 加害者の任意保険会社から保険金を受け取るとき
  • 自賠責保険から保険金を受け取るとき
  • 自分の加入する自動車保険から保険金を受け取るとき
  • 労災保険から補償を受けるとき
  • 調停や訴訟などの裁判手続きを利用するとき
  • 実況見分調書や供述調書などの刑事記録を取り寄せるとき
  • 弁護士に相談するとき

以下でそれぞれについて解説します。

2-1.加害者の任意保険会社へ保険金を請求するとき

事故に遭ったら相手の保険会社と示談交渉を進め、示談が成立したら保険金(示談金、賠償金)を受け取るものです。
相手の保険会社へ保険金を請求する際には基本的に交通事故証明書によって事故が起こったことを示す必要があります。

2-2.自賠責保険から保険金を受け取るとき

交通事故では、被害者が加害者の自賠責保険へ直接保険金を請求することもあります。これを「被害者請求」といいます。
被害者請求する場合にも交通事故証明書によって自賠責保険へ事故の発生や内容を示さねばなりません。

2-3.自分の加入する自動車保険から保険金を受け取るとき

交通事故に遭うと、相手の保険会社だけではなく自分の保険会社からも保険金を受け取れる場合があります。たとえば以下のような保険が適用される可能性があります。

  • 人身傷害保障保険
  • 搭乗者傷害保険
  • 車両保険
  • 無保険車保険

上記のような保険金を請求する際にも交通事故証明書によって事故を示す必要があります。

2-4.労災保険から補償を受けるとき

交通事故が「労災」に該当する場合、被害者は労災保険からも各種の補償を受けられます。
労災とは、業務に起因するケガや病気、後遺障害や死亡などの災害です。
業務中に交通事故に遭った場合だけではなく、通勤や退勤途中に事故に遭った場合にも労災保険から補償を受けられます。

【労災保険からの給付される主な給付金の種類】

  • 療養補償給付…病院などでかかった治療費を支給してもらえます。
  • 休業補償給付…事故で仕事を休んだ分の収入補償です。
  • 障害補償給付…事故で後遺障害が残った場合の補償です。
  • 介護補償給付…介護が必要になったら介護に必要な費用も一部助成されます。
  • 傷病補償給付…事故で一定以上の重傷を負い、1年6か月が経過してもまだ症状固定しない場合に払われる給付金です。
  • 遺族補償給付…事故で本人が死亡してしまった場合に遺族へ払われる給付金です。
  • 葬儀費用…事故で本人が死亡すると遺族へ葬儀代も支払われます。

労災保険から上記のような補償を受けるためにも交通事故証明書が必要です。

2-5.調停や訴訟などの裁判手続きを利用するとき

相手保険会社との示談が決裂した場合などには、調停や訴訟によって賠償問題を解決しなければなりません。その際には裁判所へ交通事故の存在を証明して内容を説明する必要があります。交通事故証明書は裁判の証拠として必要です。

2-6.実況見分調書や供述調書などの刑事記録を取り寄せるとき

交通事故に遭うと、実況見分調書や供述調書を証拠として取り寄せる機会があるものです。その場合には検察庁へ交通事故の存在を証明しなければならず、交通事故証明書が必要となります。

2-7.弁護士に相談するとき

弁護士に相談する際にも、交通事故証明書があるとスムーズに話を進めやすくなります。
ただし弁護士相談の場合「交通事故証明書があれば良い」というレベルであり、「用意しないと相談できない」わけではありません。
手元に交通事故証明書がなくても相談は可能です。

3.交通事故証明書の入手方法や取得までの流れ

交通事故証明書は交通事故関係の様々な手続きを行うのに必要です。
どのようにして入手すれば良いのか、取得までの流れを含めてみてみましょう。

3-1.警察へ届ける

交通事故証明書が発行される前提として、事故を警察へ届け出なければなりません。
まずは事故が起こったらすぐに警察へ事故の報告をしましょう。
事故の相手によっては「警察を呼ばずに終わらせてほしい」「この場で示談してしまいたい」などと言ってくるケースもあります。
しかしこのような誘いに乗ってはいけません。交通事故証明書が発行されなくなるとさまざまな不都合が生じるからです。

3-2.申請方法と手数料

交通事故証明書の申請方法には以下の3種類の方法があります。

自動車安全運転センターの窓口で申請する

まず自動車安全運転センターへ行き、窓口で発行申請する方法があります。
自動車安全運転センターは全国の都道府県にあってそれぞれ窓口が設置されています。
備え付けの「交通事故証明書申込用紙」に所定の必要事項を記入して手数料を払って交通事故証明書の発行を申請すると、原則としてその日中に発行してもらえます。

窓口申請以外の方法の場合には日数がかかってしまうので、急いでいる場合には自動車安全運転センターの窓口まで行くと良いでしょう。
 
ただし事故の関連資料が自動車安全運転センターに届いていないケースや事故発生場所以外の管轄の自動車安全運転センターで交通事故証明書を申請すると、即日交付ではなく後日の郵送による交付となります。

郵便局で申請する

交通事故証明書は郵便局やゆうちょ銀行でも申請ができます。この場合には郵送で届くので、入手できるまでに数日かかります。
まずは最寄りの警察署や駐在所などで「交通事故証明書申込用紙」を受け取り、必要事項を記入しましょう。その申込用紙を持って郵便局やゆうちょ銀行に行って窓口やATMで手数料を払い込むと、申込みが完了します。
申請や支払いが完了すると、10日程度が経過したときに自宅へ交通事故証明書が届きます。

ネット経由で申請する

交通事故の当事者であれば、自動車安全運転センターのサイトから交通事故証明書を申請できます。

まずは所定の申請フォームへ申請者の氏名や住所、事故発生場所、メールアドレスなどを入力しましょう。記入ができたら送信します。こうして交通事故証明書交付申請の受付ができたら、申請受付のメールが届きます。

ネット申請の注意点

ネットで交通事故証明書を申請する際にはいくつか注意点があります。まずネット申請の場合、交通事故証明書の交付手数料は、申請後にコンビニやペイジーなどで支払う必要があります。交付手数料だけではなく、払込手数料や金融機関の手数料も申請者が負担しなければなりません。
また申請日から7日以内に交通事故証明書の手数料を支払わないと、自動的にキャンセルされます。申込みをしたら早めに支払をしましょう。

支払いが確認できたら、10日程度で申請者の住所宛に交通事故証明書が郵送されてきます。

ネット申請の場合、郵送先は事故発生時に警察に報告した住所となります。それ以外の場所へ交通事故証明書を郵送してもらえません。
事故時と住所が代わってしまった場合にはネット以外の方法(窓口申請や郵便局からの申請)を利用しましょう。

3-3.申請書へ記載する内容

交通事故証明書を申請する際には、申請書を提出しなければなりません。
申請方法によって細かい記載内容は異なりますが、大まかに言うと以下のような内容を書く必要があります。

  • 事故の種別(人身事故か物損事故か)
  • 事故発生日時や発生場所
  • 事故を報告した警察署
  • 事故を報告した年月日
  • 当事者の氏名
  • 申請者の氏名と住所

記載事項を間違えるとスムーズに交通事故証明書が発行されなくなるので、慎重に記載しましょう。

3-4.交通事故証明書の交付手数料

交通事故証明書の交付を申請すると、手数料がかかります。金額は1通につき800円です。(ただし2022年12月現在。今後、金額が改定される可能性があるので、その都度確認しましょう。)
またゆうちょ銀行からの支払の場合には払込手数料がかかりますし、金融機関から支払うときには振込手数料が発生します。

3-5.交通事故証明書は何通必要?

「交通事故証明書は何通必要なのか?」と疑問をもつ方もおられます。基本的には必要な都度、取得すればよいと考えます。たとえば提出先が1つなら1通取得するとよいでしょう。
ただ手元に1通あるといつでも必要なときに参照できて便利なので、予備として1通取得しておいても良いと考えます。
なお交通事故証明書は1枚の申請書で複数の通数を申し込めます(手数料は通数分となります)。

3-6.交通事故証明書の取得に何日かかる?

交通事故証明書の取得にかかる日数は、申請方法によって異なります。

  • 窓口申請の場合…基本は即日交付。ただし事故直後で交通事故証明書ができあがっていない場合などには後日の郵送となる。
  • 郵便局の場合…申請後10日程度
  • ネット申請の場合…手数料の払込確認後10日程度

交通事故証明書は事故当事者が保険金請求するときなどに必要となる重要書類です。
取得方法がわからない場合や忙しくて自分で取得するのが難しい場合、弁護士が取得を代行できます。お困りの場合にはお気軽にご相談ください。

4.交通事故証明書の記載事項、見方

交通事故証明書にはどのような情報が記載されるのか、みてみましょう。

【交通事故証明書の見本】

具体的には以下のような情報が掲載されます。

  • 事故照会番号

交通事故の処理を行った警察署名と交通事故の番号です。把握しておくと、警察署へ事故情報を照会するときにスムーズに確認がとれます。

  • 交通事故の発生日時と発生場所

交通事故がいつどこで発生したのかを示します。

  • 交通事故の当事者

交通事故の当事者が「甲」「乙」として掲載されます(当事者が2名の場合)。
それぞれ氏名や住所、生年月日、運転していたのか事故車両に同乗していたのかなどが記載されます。

  • 当事者の車両の情報

事故車両についての情報も記載されます。

  • 車種
  • 車両番号
  • 証明書の番号
  • 自賠責保険への加入状況、保険会社名、証明書番号など
  • 交通事故の類型

事故がどのようなものだったかも記載されます。たとえば車両同士の事故なのか、単独事故なのか、人と車両の事故なのかなどです。
出会い頭、接触、追突などの事故類型についても選択されています。

  • 人身事故か物損事故かの種別

「照合記録簿の種別」の欄には人身事故か物損事故か、記載されます。

4-1.交通事故証明書に記載されないこと

交通事故証明書に記載されるのは上記がほとんどすべてであり、その他の細かい情報は記載されません。あくまでも「交通事故の発生を証明するための証明書」なので、必要最低限の事項しか書かれないのです。
たとえば以下のような情報は記載されません。

  • 事故の過失割合
  • どちらが加害者でどちらが被害者か
  • 事故の原因
  • 損害内容や損害の金額
  • 事故の目撃者や証言などについて

とくに問題になりやすいのは「過失割合」や「どちらが加害者でどちらが被害者か」という点です。よくこういった情報も交通事故証明書を見ればわかると思っている方がいますが、交通事故証明書に過失割合や被害者・加害者の区別は書かれていません。

4-2.「甲」「乙」のどちらが加害者か

世間では交通事故証明書の「甲」「乙」表記についても「甲が加害者、乙が被害者」などと考えている方が多数います。
確かに甲の欄に過失割合が高い方の当事者が表記されるケースは多いのですが、絶対的な基準ではありません。過失割合は警察が決めるのではなく、当事者が話し合うか裁判をして決めるものだからです。

必ず甲が加害者、乙が被害者となるわけではありませんし、交通事故証明書には過失割合も記載されません。
相手の保険会社から過失割合の提示があって納得できない場合には、自分で法的な相場を調べて示談交渉を続けるか、弁護士に任せる必要があるでしょう。

5.交通事故証明書を取得する場合の注意点

交通事故証明書を取得する際には、以下のような点に注意しましょう。

5-1.事故関係者しか請求できない

交通事故証明書には事故の当事者についての個人情報が詳しく記載されています。むやみに誰でも取得できるとすると、当事者のプライバシー権が害されてしまうでしょう。そこで交通事故証明書を申請できるのは、本人か代理人、事故関係者のみとされます。
具体的には以下のような交通事故関係者のみが交通事故証明書を申請できます。

  • 交通事故の当事者
  • 当事者が死亡した場合には遺族(賠償金の請求権を引き継いだ相続人)
  • 交通事故の保険金を受け取る人
  • 業務上事故の場合の雇用主

代理人による申請について

交通事故証明書の申請権限のある人が委任状を作成すれば、代理人が申請手続きを行って交通事故証明書を受け取れます。ただし代理人による申請ができるのは「窓口」または「郵便局」のパターンであり、ネット申請の場合には代理申請が認められていません。

5-2.請求期限がある

交通事故証明書には請求期限があります。いつまでも入手できるわけではないので、必要なら早めに取得しておきましょう。
交通事故証明書の取得期間は、人身事故が物損事故かによって異なります。

  • 物損事故の場合…事故発生から3年間
  • 人身事故の場合…事故発生から5年間

数年の猶予はありますが、気がついたら期限が過ぎてしまっていた、という事例もあります。
たとえばケガの治療が長引いた上、示談交渉が決裂して訴訟になった場合などには5年を超える可能性も十分にあります。
交通事故証明書は早めに申請して、予備を含めて取得しておくと良いでしょう。

6.交通事故証明書と事故発生状況報告書の違い

交通事故証明書と似た名前の書類として「事故発生状況報告書」があります。
事故発生状況報告書は、当事者が事故の状況を説明するための書類です。
事故現場についての簡単な図面を書いて、どういった状況で事故が起こったかの説明文を記載します。
交通事故証明書は自動車安全運転センターが発行する公的な書類であるのに対し、事故発生状況報告書は当事者が作成する私的な書類である違いがあります。
また交通事故証明書には図面がありませんが、事故発生状況報告書には図面をつけなければなりません。

事故発生状況報告書も、交通事故証明書と同様に保険金請求などの際似必要となる重要書類です。書き方がわからない場合には、弁護士までご相談ください。

7.交通事故証明書と実況見分調書、供述調書の違い

交通事故関係の書類として、実況見分調書供述調書もあります。
実況見分調書とは、人身事故で警察が事故現場を確認した結果をまとめた書類です。
人身事故で警察を呼ぶと、現場で実況見分という確認・調査が行われます。
その結果、警察によって事故の状況を詳細に記す実況見分調書が作成されるのです。

実況見分調書は当事者の過失割合を定める際に役立つケースがよくあります。
当時、当事者がどのような状況で接触したのか、位置関係や出していたスピード、天候などが詳しく書かれているからです。
交通事故の過失割合でもめたときには実況見分調書を取り寄せましょう。

供述調書は、事故の状況について当事者が話した内容を警察がまとめた書類です。
事故発生直後に作成された供述調書には、新鮮な記憶にもとづいた供述内容が書かれているので、信用性が高いと考えられます。後に相手の言い分が変わった場合などには相手の主張を崩すのに使える場合もあります。

実況見分調書と供述調書は基本的に検察庁で保管されるので、検察庁へ申請して取得しましょう。

自分で取り寄せるのが手間な場合、弁護士が取得を代行できます。ただしこれらの書類は事故後すぐに取得できるとは限りません。相手の刑事裁判の進捗によっても取得の可否や時期が変わってきます。詳しくは弁護士までご相談ください。

8.交通事故証明書と物損事故報告書の違いは?

交通事故証明書に似た名称の書類として、「物損事故報告書」もあります。
物損事故報告書とは、物損事故で警察を呼んだときに作成される事故の簡単な状況報告書です。
物損事故の場合、加害者に刑事処分が行われないので詳細な実況見分調書や供述調書を作成する必要がありません。そこで簡単に物損事故報告書が作成されるのです。

物損事故で過失割合が問題になったとき、物損事故報告書が判断材料となる可能性があります。必要に応じて取得を検討してみてください。
物件事故報告書は基本的に警察で保管されています。取得できるケースとできないケースがありますが、入手を希望する場合にはまずは一度、弁護士までご相談いただけましたらアドバイスをさせていただきます。

9.交通事故証明書を入手できない場合の対処方法

人身事故が起こった場合、必ず人身事故の交通事故証明書を取得できるとは限りません。
物損事故として届け出て時間が経過してしまったら警察での切り替えも難しくなってしまうからです。その場合、物損事故の交通事故証明書しか発行されないので、保険金請求に支障をきたす可能性があります。

また事故が起こったのが駐車場や私有地であった場合、警察を呼んでも交通事故証明書が作成されない可能性が高くなります。私有地での事故は道路交通法上の交通事故にならず、警察は対応しないためです。ただ道路交通法上の交通事故でなくても保険金や賠償金の請求はできるので、事故が起こった事実を証明しなければなりません。

交通事故証明書を発行してもらえない場合、以下のように対応しましょう。

9-1,人身事故証明書入手不能理由書を提出する

人身事故の交通事故証明書がなくても、「人身事故証明書入手不能理由書」を保険会社へ提出すれば人身事故扱いしてもらって慰謝料や休業損害などの保険金が支払われます。
人身事故証明書入手不能理由書とは、人身事故の事故証明書を入手できない事情を保険会社へ説明するための書類です。必要事項を記載して提出すれば、保険会社では人身事故扱いしてもらえて人身損害に関する賠償金を払ってもらえます。

人身事故証明書の書式は保険会社によって異なります。相手保険会社に問い合わせて書式を送ってもらい、必要事項を書いて提出しましょう。

9-2.人身事故証明書の記載事項

人身事故証明書の書式は各保険会社によって異なりますが、主に記載すべき事項は以下のようなものとなります。

  • 事故の当事者
  • 事故の発生日時や発生場所
  • 物損事故の届出先の警察署と届出日時
  • 人身事故証明書を入手できない理由

人身事故証明書を入手できない理由については、以下から選ぶ方式になっているケースが多数です。

  • 受傷が軽微で検査通院(予定を含む)であったため
  • 受傷が軽微で、短期間で通院を終了した
  • 公道以外の場所(駐車場や私有地など)の事故であった
  • それら以外の事情

保険金を受け取るために人身事故証明書入手不能理由書は重要な書類です。書き方がわからない場合には、お気軽に弁護士までお尋ねください。

10.交通事故証明書の発行を受けられないリスク

交通事故証明書が発行されなくても人身事故証明書入手不能理由書で対応できるなら、不都合はないのでは?と考える方もいます。
しかし実際には交通事故証明書が出ないと、不都合が生じる可能性があります。人身事故証明書入手不能理由書はあくまで保険会社と当事者間の私的な書類であり、公的な資料としての価値がないからです。
交通事故証明書がないと、どのようなリスクが発生する可能性があるのかみてみましょう。

  • 交通事故が現実に起こったのかどうか確認がとれず、調査のために保険金の支払が遅れる
  • 人身事故として届け出ていないので「たいしたけがケガではない」と判断され、賠償金が減額される
  • 後遺症が残っても後遺障害等級認定を受けられない

交通事故証明書が発行されないリスクを避けるためにも、交通事故に遭ったら必ずすぐに警察へ届け出ましょう。事故のケガによる痛みは事故の数日後になって現れるパターンも少なくありません。いったんは物損事故として届け出ても、後に痛みやしびれなどの症状が出てきたら、早めに病院と警察へ行って人身事故への切り替えを行うべきです。

11.自転車事故と交通事故証明書

自転車事故のケースでも交通事故証明書が発行されるのでしょうか?
近年では、ロードバイクのように高速で走る自転車に乗る方も増えており、自転車同士や自転車と歩行者の交通事故による被害も多数発生しています。誰でもいつ何時自転車事故に遭うかわからない状況といえるでしょう。

自転車事故でも、事故が発生したときにきちんと警察へ届け出れば交通事故証明書を発行してもらえます。保険金請求や裁判手続の際などに利用できます。
また自転車事故も交通事故は交通事故であり、道路交通法上、警察に届け出る義務があります。
交通事故証明書を発行してもらうためにも、法律を守るためにも、自転車事故に巻き込まれたらすぐに警察へ連絡しましょう。

横浜クレヨン法律事務所では交通事故に力を入れて取り組んでいます。交通事故証明書や実況見分調書などの書類取り寄せ、事故状況報告書の作成サポート、示談交渉の代行まで被害者さまを支援させていただきます。交通事故に遭われてお困りの場合、まずはお気軽にご相談ください。