著者情報

弁護士 鈴木 晶

一般の方々に、わかりやすく法律の知識をお届けしております。
難しい法律用語を、法律を知らない人でも分かるような記事の作成を心がけています。
交通事故に関する様々な悩みを持つ方々のために、当ホームページは有益な情報を提供いたします。

交通事故は、一瞬にして人生を大きく変えてしまう可能性があります。特に、事故によって「寝たきり」の状態になってしまうと、被害を受けた本人はもちろん、その家族の生活にも大きな影響を与えてしまいます。

もし交通事故で寝たきりになってしまうと、家族はどのような問題に直面するのか、そしてどのように対応すべきなのか、この記事で詳しく解説していきます。

この記事でわかること

  • 「寝たきり」の定義についてわかる
  • 交通事故で寝たきりになる原因についてわかる
  • 家族が寝たきりになったときの対応方法がわかる
  • 寝たきりになったときの損害賠償額の相場がわかる

「寝たきり」の定義

「寝たきり」とは、病気や怪我などを理由に、日常生活のほとんどをベッドの上で過ごさなければならない状態を指します。

具体的には、次の要素をみて寝たきりの状態かどうかを判断します。

  • 認知機能の状態
    → 意識状態や理解力など。
  • 日常生活動作(ADL)の評価
    → 食事や入浴、着替え、トイレなど、日常生活における基本的な動作をどの程度自分で行えるのか。

なお、寝たきりの状態にも程度がありますので、損害賠償請求など法的な争いの場面においては介護の必要性や程度がどのくらいかが重要なポイントとなります。特に、常時介護を必要とする状態かどうかは請求額を大きく左右します。

「植物状態」とは

一般的に呼ばれる「植物状態」とは、寝たきりのなかでも意思疎通ができない状態を指し、診断名としては「遷延性意識障害」と呼ばれます。

植物状態からの回復の可能性は、損傷部位やその程度などによって大きく異なります。中にはリハビリによって徐々に回復していくケースもありますが、長期間にわたって植物状態が続くケースや意識が戻らないケースもあります。

交通事故で植物状態になった場合は後遺障害等級1級に認定される可能性が高く、高額な損害賠償請求が認められる可能性も高いといえるでしょう。

交通事故で寝たきりになる原因

交通事故では車が人に衝突するなど、非常に大きな力で身体を損傷することになり、大きな被害に遭う危険性が高いです。例えば次のような原因で寝たきりとなってしまうことがあります。

頭部外傷による脳損傷
→高次脳機能障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害、感情のコントロールが難しくなるなど、さまざまな症状が現れる。重症の場合、日常生活に支障をきたし、寝たきり状態になる。)
→意識障害(意識レベルが低下し、周囲の状況を認識したり自分の意思を伝えたりすることが困難な状態。)
脊髄損傷
→頸髄損傷(首の骨が折れたりずれたりすることで脊髄が損傷を受けると、四肢麻痺や呼吸障害が起こることがある。)
→胸髄・腰髄損傷(背骨や腰の骨が折れたり、ずれたりすることで脊髄が損傷を受けると、下半身麻痺や排泄障害が起こることがある。脊髄損傷は運動機能や感覚機能に深刻な障害をもたらし、寝たきり状態となるケースも多い。)
重度の骨折
→骨盤骨折(骨盤は身体を支える重要な骨であり、骨折により歩行が難しくなるケースもある。)
→大腿骨骨折(大腿骨は太ももにある骨で、人体の中でもっとも太く長い。高齢者の場合、大腿骨骨折をきっかけに寝たきり状態になるケースもある。重度の骨折は長期間の安静を必要とするため、その間に筋力低下や関節拘縮が起こってしまい、寝たきり状態につながるケースもある。)

交通事故による寝たきり状態は、事故の状況や被害者の年齢、体質などによって大きく異なります。同じような事故に遭っても後遺症の程度や回復のスピードには個人差があります。
しかし、いずれの場合も早期に適切な治療を受けること、リハビリを行うことが、寝たきりを防ぎ生活の質を向上させるために重要といえるでしょう

家族が寝たきりになったときの対応

交通事故被害者が寝たきりになってしまうと、本人はもちろん、家族の方にも身体的・精神的、そして経済的な負担もかかってきます。

そこで身体的な負担、精神的な負担のうち介護による負担に関しては、介護休業の検討、介護サービスの利用を検討すると良いです。とはいえ介護サービスの利用にも費用がかかりますので、加害者側への損害賠償請求であったり公的制度による支援の活用であったり、自費以外の対応も考えましょう。

公的な支援制度の利用

介護が必要になったときは、NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)の制度利用を検討しましょう。NASVAは、介護が必要な一定の後遺障害等級に認定された方を対象に、介護料の支給を行っています。

要件を満たせば、ひと月の間に介護のために負担した介護料に応じて、数万円~20万円ほどの支給を受けることができます。しかもこの介護料は、加害者側へ請求する損害賠償額から控除されることもないため、被害者家族にとってとても有利な制度といえます。

ただし受給にあたっては申請手続きが必要となりますので、まずは申請に向けて動き出すことが重要です。詳細はこちらからも確認ができますのでチェックしておいてください。

参考:NASVA「介護料のご案内」 

加害者側への損害賠償請求

治療費、入院費、慰謝料など、発生したさまざまな損害については交通事故を引き起こした相手方に賠償を求めます。

運転をしていた相手方に支払いを求めるのが原則ではあるものの、実際のところは相手方が加入している保険会社とやり取りを行うことになるでしょう。任意保険に入っているのならその保険会社と交渉を行い、そこから支払いを受けることになります。

請求のやり方や請求額の計算など、わからないことがあるときは弁護士にご相談ください。
特に、寝たきりになっている場合だと被害額も大きくなりますし、請求額が確定するまでにもある程度の期間を要します。あわてて対応しても良い結果にはなりませんし、保険会社からの提案に対しても法的な観点から吟味する必要があります。

後遺障害等級認定の手続き

交通事故で寝たきり状態になった場合、後遺障害等級の認定を受けることが重要になります。後遺障害等級の認定の有無と等級が、損害賠償請求額を大きく左右するためです。

後遺障害等級とは、交通事故によって負った怪我の治療後も残ってしまった後遺症の程度を、1級~14級までの等級で評価するものです。等級が高いほど(1級に近いほど)、後遺症が重いと判断されて損害賠償額も高くなります。
そして寝たきり状態であれば1級や2級など、高い等級に認定される可能性がとても高いです。

《 後遺障害等級認定が損害賠償請求額に与える影響 》

  • 後遺障害慰謝料の請求ができるようになる
    → 後遺障害によって生じる精神的苦痛に対する慰謝料が認定できる。等級が高いほど慰謝料額も高くなる。
  • 逸失利益の請求ができるようになる
    → 事故がなければ得られたであろう将来の収入の損失分。寝たきり状態になった場合は労働能力が喪失したと評価でき、より高額な逸失利益が認められる可能性が高い。
  • 介護費用の請求額が大きくなりやすい
    → 寝たきり状態の場合、介護費用は長期的・生涯にわたって発生するため、高額になることが予想される。後遺障害等級の認定があると介護の必要性や介護費用の大きさについてより説得的に示すことができ、請求額も高くなる傾向がある。

寝たきりになったときの損害賠償額の相場

損害賠償額は、事故の状況、被害者の年齢、後遺障害等級などによって大きく異なりますが、寝たきり状態になった場合はトータルで数千万円~数億円と交通事故のなかでも高額になる傾向にあります。

簡単に各費目の相場、目安となる金額を紹介します。

まず「慰謝料」についてですが、入通院や治療を繰り返すことに対する精神的苦痛に対して入通院慰謝料が発生します。治療期間、入院期間が長いほど高額なるところ、寝たきりになっているのであればこの期間も長くなりやすいと考えられます。自賠責保険の場合だと1日あたり4,200円を基本としますが、裁判で争う場合や弁護士に頼んで交渉をした場合だとこの金額を大きく上回る金額を請求することも可能です。
また、後遺障害等級の認定を受けることで後遺障害慰謝料の請求も可能となります。等級が1級や2級と高い場合、自賠責保険でも1,000万円超、裁判上は2,000万円を超えて請求が認められることもあります。

次に「逸失利益」についてです。
寝たきりだと労働能力の喪失程度が大きいため、ほかの交通事故事案に比べて高額な逸失利益が算定される可能性が高いです。逸失利益については本人の収入や年齢によっても大きく変動しますので一概にはいえませんが、本人が若く高収入である場合は1億円を超える可能性も十分に考えられます。

「介護費用」についても、寝たきりになっている場合だと生涯にわたって発生する可能性が高いため、やはり比較的高額になることが予想されます。そこで計算方法としては、1日あたりの介護費用から年間の介護費用を算出し、そこに平均的な余命年数を乗じる方法が挙げられます。年齢に大きく左右されますが、数千万円以上の金額が算出される可能性も十分に考えられます。

ほかにも「医療費(手術費、リハビリ費用、薬剤費など)」「入院雑費」などさまざまな費用が発生しますので、それぞれにつき金額を調べ、請求を行いましょう。

納得のいく金額を請求するためのポイント

寝たきりとなった場合の損害賠償請求において特に重要なのは次の3点です。

後遺障害等級認定の手続き寝たきりになると、後遺障害等級は1級から3級など高い等級で認定される可能性が高く、損害賠償額を大きく左右することになる。 そこで、医学的な知見に基づいた等級認定の申請を行うことは当然であるが、その際には後遺障害等級制度を理解し、法的な知見も踏まえた診断書の作成が重要。
介護費用の適切な計算寝たきりになってしまっている場合、請求額全体に対する介護費用の割合が高くなってくる。 そこで介護の内容や時間、必要な介護サービスのことなどを具体的に考慮し適切な金額を算出する必要がある。金額が大きいと相手方と争いになる危険性も高くなるため、過去の裁判例なども参考にしながら算定を行うと良い。
弁護士への依頼寝たきりになった場合の損害賠償請求は高額になるケースが多く、手続きも複雑。相手方との交渉の場面などでも高い専門性が求められるため、交通事故の取り扱い実績がある弁護士に相談することが結果を大きく左右する。 弁護士への依頼は納得のいく請求額を実現するだけでなく、その過程の精神的な負担を軽減し、手続き上の手間も軽減されるなどのメリットもある。

浜クレヨン法律事務所では年間150件以上の交通事故案件を取り扱い、年間相談件数は400件以上の実績があり、交通事故対応スペシャリストの弁護士が在籍しております。

  • 初回相談・着手金:無料
  • 弁護士費用特約未加入者:完全成果報酬
  • 弁護士費用特約加入者:実質0円(保険からのお支払いのため)
  • 事前予約で休日・時間外の無料相談OK:LINEから無料相談

簡単な相談からでも大丈夫ですので、ちょっとでもなにかしらの不安を抱えている方はぜひ一度ご相談くださいませ。

メールフォームはこちら