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弁護士 鈴木 晶
一般の方々に、わかりやすく法律の知識をお届けしております。
難しい法律用語を、法律を知らない人でも分かるような記事の作成を心がけています。
交通事故に関する様々な悩みを持つ方々のために、当ホームページは有益な情報を提供いたします。

交通事故の示談結果は、被害者の今後の人生を左右する可能性を持っています。大きな事故であるほどその影響は大きくなりますので、慎重に、的確に対処していかなくてはなりません。
しかしながら加害者側の保険会社から交渉を迫られることもあり、事故後の混乱や焦りから十分な検討もないまま示談に応じてしまうケースもあります。このような事態に悩まされることのないよう、適切な対応方法を確認していきましょう。
示談を求められたときの対応

加害者の保険会社から示談を迫られても、焦って応じてはいけません。損害が確定するまで待ち、示談内容を慎重に確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。示談は一度成立すると取り消すことが困難なため注意してください。
示談を迫られたとき、特にチェックしておきたいポイントがこちらです。
示談を始めるのに適したタイミングか | 怪我をした場合なら治療を終えて完治した後、後遺障害が残ったときは後遺障害等級の認定後、など損害が確定してから示談に応じるべき。損害額が不明瞭な段階で示談交渉を持ちかけられても応じないようにする。 |
示談内容の精査 | タイミングに問題がなくても、必ず示談書の全項目に目を通す。特に重要なのは日付や場所、当事者名などから交通事故が特定できているかどうか、過失割合が正しく記されているか、示談金が妥当な金額か、など。 |
また、感情的にならず冷静に対処していく姿勢が求められます。相手方の主張内容に納得いかない部分があっても落ち着いて対応すべきです。法的に難しい問題に直面することもあるかもしれませんが、わからないままサインせず、専門家に相談することも検討しましょう。
以下でこれらのポイントについて詳しく見ていきます。
適切なタイミングで示談交渉を始めるべき

適切な時期に交渉を始めることで、公平な賠償を受けられる可能性が高まります。保険会社が早期の示談を迫ってきても無理に応じる必要はありません。場合によっては治療費の打ち切りを提案し、催促してくることもあるでしょう。しかし完治あるいは症状が完全に固定していない段階で応じてしまうと、後々必要な賠償金が受け取れなくなるリスクが高まります。
タイミングが重要な理由
示談交渉のタイミングは「損害額の確定」に関わる重大な問題です。被害者側としては一早く問題を解決してわずらわしい手続きから解放されたいと思うかもしれません。
しかしあとで後悔しても取り返しがつかないため、相手方の求めに安易に応じることなく、ご自身にとって最適なタイミングをうかがうべきです。
後遺症があるとき、後遺症が残るかもしれないときはより示談交渉のタイミングに配慮してください。その後遺症が後遺障害等級の認定を受けるかどうか、等級の程度によって請求できる損害賠償額が大きく変わってきます。
適切なタイミングとは
示談交渉を開始する最適なタイミングは、事故の種類や被害の程度によって異なります。
示談交渉を開始するタイミング | |
怪我をした場合 | 「治療が完全に終了した後」から交渉を始めるべき。 怪我の全容が明らかになることで本当に請求すべき金額がわかる。また、治療期間をはっきりさせられることで休業損害も確定できる。 |
後遺障害が残った場合 | 「後遺障害等級の認定を受けた後」から交渉を始めるべき。 等級認定は、通常、治療終了後の医師の診断書をもとに行われる。この手続きには時間がかかる(通常3〜6ヶ月程度)が、後遺障害等級認定によって逸失利益や後遺障害慰謝料などが請求可能となり、大幅に請求額が変わる。 |
死亡事故の場合 | 「葬儀後または四十九日が終了した後」から交渉を始めるべき。四十九日の法要までの葬儀費用を損害の内容として含めて請求できるため、この期間が過ぎるまでは待つ。なお、死亡事故の場合にも逸失利益と死亡慰謝料の請求ができる。 |
物損事故の場合 | 「修理費の見積もりが完了した後」から示談を始めるべき。 見積りは、信頼できる複数の業者から見積もりを取ると良い。複数の業者に見てもらうことでより適正な価額を把握できる。また、修理期間中の代車費用あるいは全損と判断された場合の代替車両の購入費用や廃車費用なども確定してから始めると良い。 |
以上のタイミングを意識しておくと、請求すべき損害賠償金の額を確定させてから適切な形で交渉を始めることができるでしょう。
冷静・慎重な判断を心がける

事故直後は、身体の痛みやショックにより、正常な判断が難しくなっているかもしれません。そのような時期に保険会社から示談の提案を受けると、早く事態を収束させたいという気持ちから、検討が十分にできていないにもかかわらず提案を受け入れてしまうこともあります。
しかし、落ち着いて、慎重に判断するよう心がけましょう。そのためにも「示談交渉にすぐに応じるべき義務はない」ということを認識しておいてください。不法行為に基づく損害賠償請求には消滅時効の規定が適用されますので3年以内(人身事故なら5年以内)に請求を行う必要がありますが、その期間内であれば問題ありません。
保険会社の意図・戦略を理解する
冷静・慎重な判断を下せるようになるには「相手方の意図や狙いを理解すること」が有効です。
保険会社は、早期解決や支払い金額を低く抑えることを目指してさまざまなアプローチを取ることがあります。たとえば、一般的な補償額として比較的低めの金額を最初に提示して被害者の反応を見ることがあるかもしれません。また、治療の長期化を避けるため「これ以上の治療による改善は見込めない」といった説明を行い治療の終了を促すこともあるかもしれません。やや強引な態度で早期の決断を促したりする事態も起こり得ます。
精神的な負担も感じるかもしれませんが、このような状況にも折れることなく、分からない点があるなら遠慮せずに説明を求めることが大切です。
また、保険会社とのコミュニケーションにおいては、自身の発言にも注意してください。気を遣ってしまい、「たいしたことはありません。」「もう大丈夫です。」といった反応をしてしまうこともあるでしょう。一見何気ない言葉が後の交渉に響く可能性があるため、相手方の意見をそのまま吞むような言葉には慎重になるべきです。
なにより、内容を十分に検討しないまま書類にサインすることは避けなくてはなりません。その場しのぎで対応したつもりが、サインした書面の内容通りに確定してしまいます。
交渉の記録を残しておく
示談交渉を適切に進めるためには、交渉の経過を詳細に記録することが重要です。
そこで保険会社とのやり取りについて、日時・担当者名・具体的な協議内容を可能な限り記録しておくことをお勧めします。特に注意すべきは口頭での提案や約束です。後日の解釈の違いによるトラブルを防ぐため、メールや文書で確認を取っておきましょう。
これらの記録は、交渉が難航した場合や訴訟に発展した場合の重要な資料となる可能性があります。
示談内容の入念なチェック

交通事故の示談書は、被害者と加害者側の権利義務関係を確定させ、その事実を客観的に証明するためにも重要な意味を持つ文書です。
一度署名すると原則として内容の変更や取り消しはできないため、署名前の入念な確認が必要不可欠です。法律や保険に関する用語について、その意味を正確に理解しないまま安易に同意することは避けましょう。
特に注意が必要なのは、「一切の・・・」や「すべての・・・」などの包括的な表現です。このような表現がご自身にとって不利な結果を招くものとならないか、将来発生し得る請求権を失わせる内容となっていないかを精査してください。
確認すべき重要項目
示談書のチェックにおける重要項目を簡潔に整理すると下表のようにまとめられます。
確認項目 | 確認内容 |
---|---|
事故の特定 | ・日時、場所が正確に記載されているか ・当事者(加害者、被害者)の氏名が正しいか ・事故の状況が適切に描写されているか ・車両ナンバーや保険証券番号が正確か |
過失割合 | ・事故の状況に応じた適切な過失割合が記載されているか ・複数の当事者がいる場合、それぞれの過失割合が明確か ・過失割合の根拠が明示されているか |
請求額 | ・治療費、休業損害、慰謝料などの内訳が明確か ・金額が適正かつ十分であるか ・将来の治療費や介護費用が考慮されているか ・各項目の計算根拠が明確か |
後遺障害 | (後遺障害が発生している場合のみ) ・後遺障害等級の記載が正しいか ・等級に応じた適切な補償が提示されているか ・将来の収入損失が考慮されているか |
物的損害 | (物損が発生している場合のみ) ・車両や所持品の損害が適切に評価されているか ・修理費や代替品の費用が正確に記載されているか ・代車費用や価値減少分が考慮されているか |
示談の範囲 | ・示談の対象となる損害の範囲が明確に記載されているか ・将来発生する可能性のある損害についての取り扱いが明記されているか ・示談成立後の権利関係が明確か |
支払い条件 | ・支払い方法(一括か分割か)が明記されているか ・支払い期日が明確に記載されているか |
少なくとも上記の要素は意識して目を通しましょう。
弁護士への相談も検討

交通事故の示談交渉は、法律や保険に関する専門的な知識が必要となる複雑な問題です。被害者が単独で保険会社と交渉を行うことも不可能ではありませんが、専門家に相談することでより適切な判断と対応ができるようになります。具体的には、弁護士の利用で以下のようなメリットが得られます。
- 交通事故や保険に関する法律や判例について専門的な知見を得られる
- 自身の事案について客観的な評価を受け、適切な賠償金額の目安を知ることができる
- 保険会社との交渉をより効果的に進められる可能性がある
- 専門家のサポートにより交渉における不安や焦りを軽減できる
事故の規模が大きい、複雑な事案であるほどそのメリットは大きくなります。
また弁護士への相談は早いうちに始めることが重要で、すでに「加害者側の保険会社から示談交渉を迫られている」という現状があるのならすぐにでも弁護士を探しましょう。
相談の際は事故の状況や経過を時系列で整理し、医療記録や保険会社とのやり取りの記録など、関連する資料をできるだけ用意しておくと効率的に話が進みます。弁護士はこれらの情報をもとにご自身の置かれている状況、事案について客観的に評価し、アドバイスを提供します。
横浜クレヨン法律事務所では年間150件以上の交通事故案件を取り扱い、年間相談件数は400件以上の実績があり、交通事故対応スペシャリストの弁護士が在籍しております。
- 初回相談・着手金:無料
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