信号機のない交差点では、交通整理が不十分となって交通事故が起こりやすい傾向があります。右折車同士が接触した場合、お互いの過失割合がどのくらいになるのかパターン別にみていきましょう。
道路幅が同程度の場合
基本の過失割合
信号機のない交差点で道路幅が同程度の場合の右折車同士の交通事故における基本の過失割合は、左方車:右方車=40:60になります。
道路交通法によると、交差点においては基本的に「左方車」が優先されます(道路交通法36条1項1号)。そこで両方とも右折する場合、左方から進行してきた車両が優先されて過失割合が低くなります。結果として左方車の過失割合が40%、右方車の過失割合が60とされます。
基本の過失割合は、以下のような要素によって修正される可能性があります。
- 左方車が右折方法違反…左方車に10%加算
- 左折車が右折禁止違反…左方車に10%加算
- 左方車に著しい過失…左方車に10%加算
- 左方車に重過失…左方車に20%加算
- 右方車に右折方法違反…右方車に10%加算
- 右方車に右折禁止違反…右方車に10%加算
- 右方車に著しい過失…右方車に10%加算
- 右方車に重過失…右方車に20%加算
右折方法違反とは
右折方法違反とは、道路交通法に定められる右折方法を守らないで右折することです。
道路交通法34条2項によると、車両が右折するときには、「あらかじめできる限り道路の中央に寄り、交差点の中心の直近の内側を徐行しなければならない」とされています。それにもかかわらず徐行や減速をしなかった場合には、交通違反によって危険を発生させたといえるでしょう。左方車が「合図をせずに右折した場合」や「早回り右折」した場合も右折方法違反となります。右方車であれば徐行しなかった場合、合図をしなかった場合、大回り右折をした場合などに右折方法違反となります。
右折禁止違反とは
右折禁止違反とは、右折禁止場所で右折することです。いうまでもなく、右折禁止場所では右折をしてはなりません。それにもかかわらず右折した車両に高い過失が認められるので、過失割合が加算されます。
著しい過失とは
著しい過失とは、通常想定される過失を超える不注意をいいます。例を挙げると時速15キロメートルを超えるスピード違反、著しい前方不注視、酒気帯び運転、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、スマホやカーナビ、テレビを見ながらの運転などが該当します。
重過失とは
重過失とは、故意とも同視できるような重大な過失です。たとえば酒酔い運転、無免許運転、時速30キロメートルを超えるスピード違反、居眠り運転などが重過失とされるケースが多数です。
一方の道路幅が明らかに広い場合
基本の過失割合
右折車同士の交通事故で一方の道路が明らかに広い場合、基本の過失割合は狭路車:広路車=70:30となります。
道路交通法上、狭路を走行して交差点へ入る車(狭路車)は、広路を走行してきた車(広路車)へ道を譲らねばなりません(道路交通法36条2項)。それにもかかわらず不注意に交差点へ進入して広路車に接触した以上、狭路車の過失割合は広路車より高くなるといえるでしょう。そこで基本の過失割合としては、広路車が30%、狭路車が70%とされます。
またこの類型の場合、「右方か左方か」という区別ではなく「狭路」か「広路」かによって過失割合が判断されるので注意しましょう。左方車であっても狭路であれば過失割合は70%とされますし、広路であれば30%になります。
広路車と狭路車が接触した場合、以下のような事情によって過失割合が修正される可能性があります。
- 狭路車が右折方法違反…狭路車に10%加算
- 狭路車が右折禁止違反…狭路車に10%加算
- 狭路車に著しい過失…狭路車に10%加算
- 狭路車に重過失…狭路車に20%加算
- 広路車に右折方法違反…広路車に10%加算
- 広路車に右折禁止違反…広路車に10%加算
- 広路車に著しい過失…広路車に10%加算
- 広路車に重過失…広路車に20%加算
一方に一時停止規制がある場合
基本の過失割合
一方に一時停止規制がある場所で右折車同士の接触事故が発生した場合、基本の過失割合は一時停止義務のある車両:一時停止義務のない車両=75:25となります。
これは、一方に「一時停止義務があるにもかかわらず一時停止せずに交差点に進入した場合」の過失割合です。きちんと一時停止した場合には過失割合の「修正要素」として考慮されます。
道路交通法上、交差点において一時停止義務がある車両は、交差点前でいったん停止して周囲の安全を確かめねばなりません。交差点へ進入した後も、交差道路を進行する車両を妨害してはならないとされます(道路交通法43条)。
それにもかかわらず一時停止義務を守らず、漫然と進行して事故を起こした一時停止義務のある車両には高い過失割合が認められるでしょう。以上より一時停止義務のある車両には基本的に75%の過失割合が認められ、一時停止義務のない車両の過失割合は25%となります。
なおこの類型の交通事故では、右方か左方かは関係ありません。右方であっても左方であっても一時停止義務があれば高い過失割合が認められ、なければ過失割合は低くなります。
一時停止義務のある車両とない車両(右折車同士)が接触した事故の修正要素は、以下の通りです。
- 一時停止義務のある車両が右折方法違反…一時停止義務のある車両に10%加算
- 一時停止義務のある車両が右折禁止違反…一時停止義務のある車両に10%加算
- 一時停止義務のある車両に著しい過失…一時停止義務のある車両に10%加算
- 一時停止義務のある車両に重過失…一時停止義務のある車両に20%加算
- 一時停止義務のある車両が一時停止してから進入…一時停止義務のない車両に15%加算
- 一時停止義務のない車両に右折方法違反…一時停止義務のない車両に10%加算
- 一時停止義務のない車両に右折禁止違反…一時停止義務のない車両に10%加算
- 一時停止義務のない車両に著しい過失…一時停止義務のない車両に10%加算
- 一時停止義務のない車両に重過失…一時停止義務のない車両に20%加算
一方が優先道路の場合
基本の過失割合
交差する道路の一方が優先道路だった場合の右折車同士の事故では、基本の過失割合は優先道路車:非優先道路車=20:80となります。
交差点で2つの車両が交差して進行するとき、一方が優先道路を走行しているなら他方(非優先道路車)は優先道路車の進行を妨害してはなりません(道路交通法36条2項)。それにもかかわらず漫然と交差点に進入して事故を起こした以上、基本的には非優先道路車の過失割合が高くなります。結果として優先道路車の基本の過失割合は20%、非優先道路車の過失割合は80%とされます。
なおこの類型の交通事故における過失割合は右方であっても左方であっても関係なく、優先道路車か非優先道路車かによって決まります。右方でも優先道路車であれば過失割合が低くなると考えましょう。
一方が優先道路の場合の交通事故にも、過失割合の修正要素が適用されます。
- 非優先道路車が右折方法違反…非優先道路車に10%加算
- 非優先道路車が右折禁止違反…非優先道路車に10%加算
- 非優先道路車に著しい過失…非優先道路車に10%加算
- 非優先道路車に重過失…非優先道路車に20%加算
- 優先道路車に右折方法違反…優先道路車に10%加算
- 優先道路車に右折禁止違反…優先道路車に10%加算
- 優先道路車に著しい過失…優先道路車に10%加算
- 優先道路車に重過失…優先道路車に20%加算
過失割合に納得できない場合、弁護士にご相談を
交通事故が発生したら、示談交渉の際にお互いの過失割合を決めなければなりません。
被害者側の過失割合を過大にされてしまうと、加害者に請求できる賠償金を大きく減額されてしまうので注意してください。交通事故の賠償金は、過失相殺によって割合的に減額されてしまうためです。
ところが現実には保険会社が被害者に高めの過失割合を提示してきて、被害者がそのまま受諾してしまうケースが少なくありません。被害者が適正な金額の賠償金を獲得するには、正しい法的知識が必要となるでしょう。
ただでさえ信号機が設置されていない交差点で事故が起こると、お互いの過失割合を決めにくく、争いになりやすい傾向があります。基本の過失割合が必ずしも相当とは限らず、修正要素の適用によって大きく過失割合を変更すべきケースも少なくありません。保険会社の主張に疑問のある方は、一度弁護士までご相談ください。