信号機のない交差点では、交通事故が頻繁に発生します。

 

以下では、信号機のない交差点において、左折車と対向車線から走行してきた右折車が接触した交通事故における過失割合について、解説します。

 

信号機のない交差点で左折車と対向右折車の交通事故における過失割合

 

基本の過失割合

左折車:右折車=30%:70%

 

道路上で右左折する場合、車は交差点の手前30メートルの地点から合図を出さねばなりません(道路交通法53上1項、2項、令21条)。

また右折車の場合、あらかじめ道路の中央に寄って交差点の中心の直近の内側を徐行する必要があります。左折車の場合にはあらかじめ道路の左側に寄り、徐行しなければなりません(道路交通法34条1項、2項)。

 

こういった原則に加え、右折車の場合には交差点で左折する車両を妨害してはならない、と規定されており(道路交通法37条)、「左折車優先の原則」が定められています。

 

このように、交差点で右折車と左折車が接近する場合には基本的に左折車が優先されるため、接触事故が起こると右折車の過失割合が高めになります。

そこで基本の過失割合としては、左折車が30%、右折車が70%とされます。

基本の過失割合は、事故における個別事情によって修正されます。

修正要素は以下の通りです。

 

左折車の過失割合を加算する修正要素

左折車が徐行しなかった

道路交通法上、左折車は交差点にて徐行すべき義務を負います。徐行しなかった場合、10%過失割合が加算されます。

左折車が左折方法違反をした

左折車はなるべく道路の左端に寄って左折しなければならないので、2車線道路で左折する場合、左折車は道路端(左側)寄りの「第1車線」へ入る必要があります。それにもかかわらず左折車が道路中央寄りの第2車線へ進入した場合、危険を発生させるので左折車の過失割合が10~20%、加算されます。

右折車が既に右折していた

右折車が既に右折していたにもかかわらず左折車が無理に交差点へ入ったら高い危険が発生するので、左折車の過失割合が10%加算されます。

左折車に著しい過失

左折車に時速15キロメートル以上のスピード違反、酒気帯び運転、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切などの「著しい過失」があると、左折車の過失割合が10%加算されます。

左折車に重過失

左折車に無免許運転、居眠り運転、酒酔い運転など「重過失」がある場合には、左折車に20%過失割合が加算されます。

 

右折車の過失割合を加算する修正要素

右折車が徐行しなかった

右折車は交差点へ進入するとき、徐行しなければなりません。徐行しなければ危険が高まるので、過失割合が10%加算されます。

右折車が大回り右折をした

右折車が大回り右折をすると対向する左折車との接触の危険が高まるので、過失割合が10%加算されます。

2車線道路において、右折車が第1車線へ進入した

2車線道路で右折車と左折車が同時に交差点に入るときには、危険を避けるため、左折車は道路左側の第1車線、右折車は道路中央よりの第2車線へ入るべきです。

それにもかかわらず右折車が道路左側の第1車線へ入ると高い危険を発生させてしまうでしょう。そこで右折車の過失割合が10%、加算されます。

右折車が合図をしなかった

右折車が合図を出さないと左折車にとっては右折するのか直進するのかがわかりません。高い危険を発生させるので、右折車の過失割合が10%加算されます。

右折車に著しい過失

右折車に酒気帯び運転、スマホやカーナビを見ながらの運転、著しい脇見運転や前方不注視などの著しい過失があれば、右折車の過失割合が10%加算されます。

右折車に重過失

右折車に酒酔い運転、無免許運転、居眠り運転などの重過失があると、右折車に20%過失割合が加算されます。

 

過失割合について疑問があれば弁護士へ相談を

交通事故が発生すると、多くのケースで保険会社が「過失割合」を決めて被害者へ提示してきます。被害者が納得してそのまま示談してしまうケースも多々あります。

しかし保険会社の示す過失割合は必ずしも正しいとは限りません。被害者側の過失割合が過大にされているケースも多いので、注意しましょう。