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弁護士 鈴木 晶

一般の方々に、わかりやすく法律の知識をお届けしております。
難しい法律用語を、法律を知らない人でも分かるような記事の作成を心がけています。
交通事故に関する様々な悩みを持つ方々のために、当ホームページは有益な情報を提供いたします。

「交通事故で慰謝料請求する場合、明細や資料としてどのようなものが必要なのでしょうか?」
といった疑問を抱く方が少なくありません。

交通事故で被害者がケガをしたり死亡したりすると、加害者へ慰謝料を請求できます。
ひとことで「慰謝料」といってもいくつかの種類があります。また被害者請求の方法で慰謝料請求する際には被害者が書類を揃えなければなりません。

この記事では交通事故の慰謝料請求で必要となる明細書や資料について解説します。
人身事故に遭われた方はぜひ参考にしてみてください。

この記事でわかること

  • 被害者請求する場合の資料や明細書
  • 交通事故の慰謝料請求で必要な書類や明細書
  • 慰謝料以外の請求に必要な資料や明細書
  • 交通事故に遭ってから慰謝料を請求するまでの流れ
  • 交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

目次

1.保険会社との示談では明細書は不要

交通事故で慰謝料請求する場合、多くのケースでは相手の保険会社と示談交渉を行います。この場合、一般的には相手の保険会社が慰謝料額を提示してくるので、被害者が自分で慰謝料を計算して明細を示す必要はありません。

ただし保険会社の提示する慰謝料額が必ずしも適正とは限りません。
納得できなければ被害者側としても積極的に慰謝料額を調べる必要があります。
また加害者が任意保険に入っていない場合には、被害者が自ら自賠性保険へ慰謝料などの保険金を請求しなければなりません。この場合にはたくさんの資料や明細書などが必要になります。

被害者が自分で慰謝料の明細を調べた方が良いケース

以下のような場合、被害者が自分で慰謝料やその他の賠償金の明細を確認し、資料を用意すべきです。

  • 被害者が自分で自賠責保険へ請求する被害者請求を行う場合
  • 相手の提示する慰謝料額が妥当か知りたい場合
  • 相手の提示する慰謝料額に納得できない場合
  • 加害者本人へ直接慰謝料を請求する場合

2.被害者請求する場合の資料や明細書

被害者請求とは、被害者が相手の自賠責保険へ直接保険金を請求する手続きです。
自賠責保険とは、人身事故の被害者へ最低限の補償を行うための保険です。
相手の任意保険会社と示談交渉する場合には、相手の保険会社が自賠責保険の分も一括で対応するので、通常被害者が自賠責保険へ直接請求する必要はありません。

ただ任意保険を通さず被害者が自分で自賠責の保険金を請求する場合には被害者が直接請求します。その手続きを「被害者請求」といいます。

2-1.被害者請求すべき状況

被害者請求すべき状況としては以下のような場合があります。

  • 相手が任意保険に入っていない
  • 相手の任意保険が適用されない
  • 相手の保険会社が示談に対応しない
  • 後遺障害等級認定などで、被害者が自分で保険金請求手続を進めたい

自賠責保険へ被害者請求をすると、任意保険会社との示談が成立していなくても先に保険金を受け取れます。

2-2.被害者請求の流れ

被害者請求したいときには、以下のような流れで手続きを進めましょう。

  • 加害者の任意保険会社に被害者請求したいことを伝える
  • 必要書類や明細書を用意する
  • 加害者の自賠責保険会社へ書類や資料、明細書を提出する
  • 加害者の自賠責保険会社が申請内容を確認し、問題なければ被害者へ保険金を支払う

2-3.被害者請求するときに必要な資料や明細書

自賠責保険へ被害者請求する際には、被害者がたくさんの資料や明細書を用意しなければなりません。基本的に必要となる書類をみてみましょう。

書類の名称作成者や取得できる場所
支払請求書請求者が作成
請求者の印鑑証明書市区町村役場
交通事故証明書自動車安全運転センター
事故発生状況報告書請求者が作成
診断書医師
診療報酬明細書病院
通院交通費明細書請求者
休業損害証明書(仕事を休んだ場合)勤務先
後遺障害診断書
(後遺障害等級認定真正を行う場合)
医師
死亡診断書または死体検案書
(死亡事故の場合に必要)
医師
省略されていない戸籍謄本
(死亡事故の場合に必要)
市区町村役場

2-4.被害者請求の手続は弁護士に依頼するとスムーズに進む

交通事故で後遺障害等級認定を自分で進めたい場合などには、被害者請求を利用しなければなりません。ただし被害者請求には多数の書類が必要で、集めたり作成したりするのは大変です。自分ではスムーズに明細書や書類を用意できない方も多いでしょう。

そんなときには弁護士に依頼するようおすすめします。弁護士が慰謝料などの保険金を請求するために必要な明細書や資料を集めたり作成したりするのをサポートしてくれるので、請求手続きが大幅に楽になります。

3.交通事故の慰謝料明細

次に交通事故の慰謝料にはどういったものがあるのか、明細を確認しましょう。
交通事故の慰謝料に以下の3種類があり、それぞれ計算方法や請求に必要となる明細書などの資料が異なります。

3-1.入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、被害者が交通事故でケガをした場合に相手に請求できる慰謝料です。
事故でケガをすると被害者は強い恐怖や不安を感じるので、そういった精神的苦痛に対して慰謝料が支払われます。
入通院した期間に応じて計算されるので入通院慰謝料とよばれます。
人身事故でケガをして入通院をしたら、入通院慰謝料を請求できると考えましょう。

3-2.後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故で被害者に後遺障害が残った場合に請求できる慰謝料です。
後遺障害が残ると日常生活や仕事などに支障が出て、被害者は大きな精神的苦痛を受けます。そこでそういった被害者の苦痛に対し後遺障害慰謝料が支払われるのです。

後遺障害慰謝料を請求するには、自賠責保険で後遺障害認定を受けなければなりません。
任意保険会社に手続きを任せる事前認定と被害者が自分で自賠責保険へ請求する被害者請求がありますが、自主的に手続きを進めたい方は被害者請求を利用すると良いでしょう。

3-3.死亡慰謝料

死亡慰謝料は、被害者が交通事故で死亡してしまったときに遺族が請求できる慰謝料です。
被害者は死亡の瞬間に強い精神的苦痛を受け、そこで発生した慰謝料が遺族へ相続されると考えられています。

交通事故の慰謝料には上記の3種類があるので、計算する際にはそれぞれ別に明細を算定しなければなりません。

3-4.3種類の慰謝料計算方法

それではそれぞれの慰謝料の金額はどのようになるのでしょうか?
交通事故の慰謝料計算方法は一律ではありません。3種類の計算方法があり、どの計算方法を適用するかによって金額が大きく変わってきます。

3つの基準は以下のとおりです。

自賠責基準

自賠責基準は、自賠責保険が保険金を計算する際に適用する基準です。
自賠責保険は被害者へ最低限の補償を行うための保険なので、金額的には3種類の基準の中でもっとも低額になります。
また統一基準が定められているので、どこの保険会社でも一律の数字になります。

任意保険基準

任意保険基準は各任意保険会社が定める独自の賠償金計算基準です。それぞれの保険会社が定めるので、一律ではありません。ただし一定の相場はあります。
金額的には自賠責基準よりも多少高い程度になるケースが多数です。次にご紹介する弁護士基準よりは大幅に低い金額になるのが一般的です。

弁護士基準(裁判基準)

弁護士基準は弁護士や裁判所が利用する法的な基準です。
弁護士が示談交渉する場合や裁判所が判決を下す場合などに適用されます。
裁判所が利用するので「裁判基準」ともいわれます。
弁護士基準(裁判基準)は3つの慰謝料計算基準の中でもっとも高額で、弁護士基準で計算すると他の基準の2~3倍になるケースもあります。
被害者にとっては慰謝料を弁護士基準で計算することが重要といえるでしょう。

次にそれぞれの慰謝料の明細を確認していきます。

3-5.入通院慰謝料の明細

まずは入通院慰謝料の明細を確認しましょう。
任意保険基準は一律でなく基本的に非公開なので、数字の近い自賠責基準と弁護士基準を比較します。

自賠責基準による明細

自賠責基準の場合、次の計算式で入通院慰謝料を計算します。

「自賠責基準の入通院慰謝料額=1日あたり4300円×入通院日数」

入通院日数については、次のうち少ない方の日数とします。

  • 入院日数+通院期間
  • 入院日数+実通院日数×2

たとえば事故でむちうちになって3か月間(91日)通院したとしましょう。実通院日数は50日とします。
この場合、入通院慰謝料の金額は4300円×91日=391300円になります。

弁護士基準による明細

次に弁護士基準で入通院慰謝料を計算したときの明細をみてみましょう。

弁護士基準の場合、軽傷や自覚症状しかないむちうちの場合と通常のケガとで慰謝料額の明細が変わってきます。

【軽傷や自覚症状しかないむちうちの場合】

【表の見方】

上記の表では入院期間が横列、通院期間が縦列に記載されています。
入院期間があれば横列を参照し、通院期間があれば縦列を参照してください。
入院と通院の両方の期間がある場合には、それぞれの数字の縦列と横列のぶつかる場所を参照します。

たとえば入院1か月、通院3か月なら、入通院慰謝料額は83万円となります。

【通常のケガの場合】

こちらの表についても読み方は「軽傷または自覚症状しかないむちうちの場合」と同じです。
ただし通常のケガの場合、金額的には軽傷または自覚症状しかないむちうちの場合より上がります。たとえば入院1か月、通院3か月の場合の慰謝料額は115万円程度になります(軽傷などの場合には83万円)。

また軽傷などの場合でも通常のケガの場合でも、自賠責基準や任意保険基準と比べると弁護士基準の方が大幅に上がります。

【通院3か月の場合の比較】

自賠責基準の場合…最高387000円(90日として計算)
弁護士基準の場合…軽傷または自覚症状しかないむちうちなら53万円、通常程度のケガなら73万円

交通事故に遭ったら弁護士基準で慰謝料を計算して請求することが重要といえるでしょう。

3-6.後遺障害慰謝料の明細

次に後遺障害が残った場合の後遺障害慰謝料の明細についてみてみましょう。ここでも弁護士基準と自賠責基準を比較します。

弁護士基準で計算すると、慰謝料の金額は自賠責基準の2~3倍程度になります。後遺障害の等級が高くなるほど開きが大きくなっていきます。
被害者が適正な後遺障害慰謝料を受け取るため、弁護士基準を適用して計算することが重要といえるでしょう。

3-7.死亡慰謝料の明細

自賠責基準と弁護士基準で計算すると死亡慰謝料の明細がどうなるのか、みてみましょう。

自賠責基準による明細

自賠責基準の場合、被害者本人の死亡慰謝料と遺族の慰謝料に分けて計算します。
被害者本人の死亡慰謝料は一律で400万円です。

具体的には以下のとおりとなります。

【遺族の慰謝料の表】

たとえば、被害者に扶養されていた遺族が3人いた場合、死亡慰謝料は合計で400万円+950万円=1350万円になります。

弁護士基準による明細

弁護士基準の場合の死亡慰謝料明細をみてみましょう。
弁護士基準の場合にも被害者に扶養されていた遺族の有無などによって慰謝料額が変わります。

具体的な明細は以下のとおりです。

被害者の立場死亡慰謝料の相場
一家の支柱2800万円
母親や配偶者2500万円
独身者や子ども2000万円~2500万円

死亡慰謝料の金額も弁護士基準と他の基準とで大きく変わります。1000万円以上の差額が出ることもめずらしくありません。

交通事故に遭ったら、必ず弁護士基準を適用して慰謝料の明細を計算しましょう。

4.交通事故の慰謝料請求で必要な書類や明細書

次に交通事故で慰謝料請求するときに必要となる書類や明細書を確認しましょう。

4-1.書類や明細書が必要な場合

交通事故で慰謝料請求する場合、被害者は必ずしも書類や明細書を集めなくてもかまいません。冒頭でもご説明したように、加害者の任意保険会社と示談交渉して慰謝料を受け取る際には保険会社が慰謝料を計算して慰謝料額を提示するからです。
しかし保険会社の提示する慰謝料額は適正とは限りません。納得できず反論するなら自分の主張を裏付けしなければなりませんし、自賠責保険へ被害者請求する方法もあります。
これらの対応をとるためにも、明細書や資料を集めましょう。

4-2.入通院慰謝料の請求に必要な書類・明細書

入通院慰謝料を請求するのに必要な書類や明細書は以下のとおりです。

必要書類や明細書書類の入手先、作成者
交通事故証明書自動車安全運転センター
事故発生状況報告書請求者が作成
診断書病院(医師)
診療報酬明細書病院
整骨院などの施術を受けたら
施術証明書・施術費明細書
整骨院など
通院交通費明細書請求者が作成
タクシーや駐車場を利用したら
レシートや明細書
タクシー会社や駐車場
印鑑証明書市区町村役場

4-3.後遺障害等級認定の申請に必要な書類・明細書

後遺障害慰謝料を受け取るには後遺障害等級認定を受けなければなりません。
自賠責保険への後遺障害等級認定の申請には、入通院慰謝料を請求するための書類に加えて次の資料が必要です。

必要書類や明細書書類の入手先、作成者
後遺障害診断書病院(医師)
各種検査資料病院

後遺障害診断書について

後遺障害診断書については医師に作成を依頼しましょう。普段の診断書とは別に専用書式で作成してもらわねばなりません。
医師には自覚症状をわかりやすく伝えて、症状の内容を診断書へ反映してもらう必要があります。

検査資料について

検査資料とはレントゲンやMRI、CTなどの画像資料です。
必要十分な検査を受けていないと後遺障害等級認定を受けるのが難しくなってしまいます。
後遺障害等級認定を申請する際には、認定に必要な検査を漏れなく受けておくことが推奨されます。たとえばひとことで「MRI」といっても、医療機器の精度によって映る画像が大きく異なってくる可能性もあります。
後遺障害等級認定を受けたいなら、できるだけ交通事故の後遺障害認定に詳しい専門医にかかり、高機能な医療機器を備えている医療機関を受診すべきといえるでしょう。

4-4.死亡慰謝料の請求に必要な書類・明細書

死亡慰謝料を請求する場合、次のような書類が必要となります。

必要書類や明細書書類の入手先、作成者
死亡診断書または死体検案書病院(医師)
除籍謄本市区町村役場
戸籍謄本市区町村役場

多数の明細書や書類を自分1人で集めるのは大変です。困ったときには弁護士へ相談しましょう。弁護士からアドバイスやサポートを受けられれば書類や明細集めが非常に楽になります。

5.慰謝料以外の請求に必要な資料や明細書

交通事故に遭ったときに請求できるのは慰謝料だけではありません。治療費や休業損害など、さまざまな損害賠償金を請求できます。以下では慰謝料以外に請求できる費用の明細や請求に必要な明細書、資料などを確認しましょう。

5-1.交通事故で請求できる賠償金の明細

  • 治療関係被害者
  • 器具などの購入費用
  • 通院交通費
  • 付き添い看護費
  • 入院雑費
  • 家屋や車の改装費
  • 葬儀関係費
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 慰謝料
  • 車の修理費用、買い替え費用
  • 積荷などの弁償金

交通事故で賠償金を請求するには上記の費目を漏らさずに合計して、明細をきっちり計算しなければなりません。漏れがあるとその分の賠償金を受け取れず不利益を受ける可能性があります。
自分で明細を計算する自信のない方は弁護士へ相談しましょう。

以下では各賠償金を請求するのに必要な資料や明細書を項目ごとにご紹介していきます。

5-2.治療費を請求するのに必要な明細書

入通院にかかる実費など、治療費を請求するのに必要な明細書は以下のとおりです。

費用の名称必要書類や明細書書類の入手先、作成者
治療費診断書や診療報酬明細書病院
手術費用診断書や診療報酬明細書病院
リハビリ費用施術証明書や施術費明細書病院や整骨院など
入通院にかかった費用診断書、診療報酬明細書病院
通院交通費通院交通費明細書請求者が作成
針灸・マッサージ費用施術証明書・施術費明細書整骨院

通院交通費明細書について

通院交通費を請求する際には、自分で通院交通費明細書を作成しなければなりません。
電車やバスなどを利用したら利用金額や日付についてメモを残しましょう。
駐車場などの領収証もすべて保管しておく必要があります。

5-3.付添看護費

付添看護費とは、入通院などの治療を受けるとき、親族などに付き添ってもらった場合に請求できる費用です。
家族などの近親者が付き添った場合には付添看護自認書、プロの看護師に依頼したときは付添看護領収書を用意しなければなりません。
書式が必要な際には保険会社へ問い合わせましょう。

なお付添看護が必要かどうかは医師の判断によって変わってきます。必ず払ってもらえるとは限りません。

付添看護費として認められる金額

付添看護費として認められる費用の金額は入院したか通院したかで異なりますし、計算基準によっても変わります。

弁護士基準の場合、請求できる金額の明細は以下のとおりです。

  • 通院付添看護費…1日あたり3300円程度
  • 入院付添看護費…1日あたり6500円程度
  • 職業看護師がついた場合…実費

5-4.入院雑費

入院雑費とは、入院している間に必要となるさまざまな実費です。
以下のようなものが該当します。

  • 日用品や雑貨の購入費
  • 医師の指示による栄養補給の費用
  • 電話代などの通信費
  • 新聞代やTVカード代など

入院雑費の明細は、弁護士基準の場合1日あたり1500円程度です。

5-5.器具や装具の費用

事故に遭って車いすや義足などの器具や装具が必要になったら、器具装具の費用も請求できます。
器具装具の費用としては、以下のようなものが該当します。

  • 車いす
  • 松葉づえ
  • 義手、義足
  • 義眼
  • コンタクトレンズ、メガネ
  • 義歯
  • 補聴器

将来の買い替え費用も請求できます。

器具装具の費用を請求するため、購入したときの領収証をきちんととっておきましょう。

5-6.診断書などの文書料

医師に診断書の作成を依頼すると費用がかかります。こうした診断書などの作成費用は「文書料」として加害者へ請求できます。
具体的には以下のような費用が文書料に該当します。

  • 診断書の作成費用
  • 診療報酬明細書(レセプト)作成費用
  • 医師の意見書の作成費用
  • レントゲンやMRIなどの検査結果を交付してもらう費用

請求するためには病院で発行された領収証、明細書をとっておきましょう。

5-7.休業損害

有識者の方が交通事故でケガをした場合には、休業損害を請求できます。
休業損害とは、交通事故のケガの治療のために仕事を休んだために発生した損害です。
休業するとその分はたらけなくなって損害が発生するので、休業損害として相手に請求できます。

休業損害の請求に必要な書類は、被害者の職業によって違います。

休業損害請求に必要な書類、明細書

給与所得者の場合(パート・アルバイトを含む)

  • 休業損害証明書…勤務先に作成してもらう
  • 給与明細書、源泉徴収票(事故前年のもの)…勤務先から発行してもらう

事業所得者や事業所得者の家族専従者の場合

  • 確定申告書の控(事故前年のもの)…請求者が作成して税務署で受付印をもらう

主婦や主夫などの家事従事者の場合

  • 住民票…市区町村で発行してもらう

休業損害の計算方法は自賠責基準と任意保険基準、弁護士基準で異なります。
弁護士基準で計算すると他の基準より大幅に高くなるケースもあるので、被害者としては弁護士基準で明細を計算するよう推奨します。

5-8.後遺障害逸失利益

有識者の方が交通事故に遭って後遺障害が残った場合、相手に後遺障害逸失利益を請求できます。
逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって得られなくなった将来の収入です。
交通事故で後遺障害が残ると労働能力が低下して、将来得られたはずの収入が低下すると考えられます。よって逸失利益を請求できるのです。

逸失利益としては、就労可能年数に対応する収入低下分を請求できます。専門的な計算方法があるので、わからないときには弁護士へ相談しましょう。
逸失利益について、詳しくはこちらの記事に詳しく掲載していますのでご参照ください。

5-9.死亡逸失利益

有識者であった被害者が死亡した場合には、死亡逸失利益を請求できます。
死亡すると、被害者は一切はたらけなくなって収入が失われるからです。
死亡逸失利益も基本的に就労可能年数分を請求できます。

6.交通事故に遭ってから慰謝料を請求するまでの流れ

交通事故に遭ってから慰謝料を請求するまでの流れは以下のようになります。

6-1.事故発生

交通事故に遭ったら、必ずすぐに警察へ届け出ましょう。
警察への報告は道路交通法上、事故当事者(車両の運転者や同乗者)の義務です。
また警察へ届出をしないと交通事故証明書や実況見分調書などが作成されず、保険金の請求をスムーズに進められなくなる可能性もあります。
相手が警察へ報告しようとしない場合、被害者の方から積極的に110番通報しましょう。

ケガをしているなら人身事故として届け出る

交通事故には人身事故と物損事故の2種類があります。
ケガをしているなら、必ず人身事故として届け出ましょう。そうしないと人身事故の事故証明書が発行されず、後の保険金請求に支障が出る可能性があります。
またその場ではケガをしたと思わなくても、後から痛みが出てくる場合が少なくありません。そんなときには早めに病院へ行きましょう。

6-2.入通院治療を受ける

交通事故でケガをしたら、入通院治療を受けなければなりません。適切な治療を受けないとケガがなかなか治りません。また病院で治療を受けないと入通院慰謝料は請求できません。
交通事故でケガをしたら入院が必要な場合はもちろん、医師の指示に従って必要は範囲で病院に通院を続けましょう。

なお入通院にかかる治療費は、通常相手の任意保険会社が負担してくれます。ただし通院期間が長くなってくると、治療費を打ち切られるケースもあります。その場合には医師と相談をして、まだ治療が必要と判断されたら健康保険を適用して治療を継続しましょう。

治療は医師が「完治」または「症状固定」と判断するまで継続する必要があります。

6-3.後遺障害等級認定

ケガの治療を受けても完治せず後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定の手続きを行います。
後遺障害等級認定の手続き方法には事前認定と被害者請求の2種類があるので、どちらか状況に適した方法を選択しましょう。
後遺障害の等級が認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を受け取れるようになります(受け取れる時期は事前認定か被害者請求かで異なります)。

6-4.示談交渉

完治した場合は治療終了後すぐに、症状固定して後遺障害等級認定を行った場合には認定手続きが終わってから示談交渉を開始します。
相手が任意保険に入っている場合、相手の任意保険会社の担当者と示談交渉を進めることになります。任意保険に入っていない相手方の場合、相手本人と話し合いをしなければなりません。

示談交渉で話し合って決めるべき内容は以下のとおりです。

  • 賠償金の費目(治療費や通院交通費、休業損害や慰謝料などの費目です)
  • それぞれの費目のおける金額
  • 過失割合

交渉の結果、慰謝料を含めた示談金の金額が決まります。

6-5,示談成立と賠償金の支払い

示談が成立したら、示談書を作成して賠償金の支払いを受けます。
相手が保険会社の場合、示談書作成後1~2週間程度の間に慰謝料が支払われるのが一般的です。

示談交渉をしても合意できない場合には、訴訟などの方法で賠償金を請求しなければなりません。

7.交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

交通事故で慰謝料請求を弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

7-1.弁護士基準が適用されて慰謝料が増額される

慰謝料計算の際に弁護士基準が適用されるので、保険会社基準よりも大幅に慰謝料額が増額されるケースが多数です。

7-2.示談交渉がスムーズに進んで早く賠償金を受け取れる可能性が高まる

弁護士が対応すると示談交渉がスムーズに進みやすいので、賠償金を早めに受け取りやすくなります。

7-3.被害者請求のサポートを受けられる

自分で被害者請求したい場合にも、弁護士がサポートしてくれるとさほどの労力をかけずにスムーズに進められます。

7-4.ストレスや不安が軽減される

相手の保険会社への対応などを弁護士に任せられるので、ストレスも軽減されます。